日本大百科全書(ニッポニカ) 「地域未来投資促進法」の意味・わかりやすい解説
地域未来投資促進法
ちいきみらいとうしそくしんほう
地域の強みを生かした中核産業を育て、地域の成長基盤を整えることを目ざす法律。正式名称は「地域経済牽引(けんいん)事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」(平成29年法律第47号)。地域ごとの特性を生かした産業振興に取り組む自治体の計画や、その担い手となる地域未来牽引企業を選定し、規制緩和、補助金交付、税制優遇などで支援する仕組みである。製造業支援が中心であった企業立地促進法(「企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律」平成19年法律第40号)を改正し、観光や農業などの非製造業をも総合的に支援する法律として2017年(平成29)7月末に施行された。所管は経済産業省。経済産業省は同法を基に、国内炭から発生するメタンガスを活用した水素拠点構想(北海道釧路(くしろ)市)、サッカークラブを軸にしたスポーツ振興事業(福島県いわき市)、阿蘇(あそ)山の観光・畜産業振興事業(熊本県)などを選定。地域未来牽引企業2148社を中核に2017年から3年間で1兆円の投資拡大と、国内総生産(GDP)の5兆円押し上げを目標に掲げている。
日本の地域経済を支えてきた製造業の投資はリーマン・ショック前の水準に戻っておらず、非製造業の投資の4分の3は三大都市圏へ集中しているのが実態である。地域未来投資促進法の制定は、地方への投資を促進し、規制緩和や税・財政支援で将来の成長産業を育成し、地域経済の好循環を生み出すねらいがある。同法に基づく支援制度を受けるには、まず地方自治体が対象地域、業種、経済効果などを盛り込んだ基本計画を策定し、国の同意を得る(2018年1月末時点で、同意された基本計画は45道府県から計145)。次に自治体の基本計画に沿って、企業などが地域経済を牽引する事業計画を策定し、都道府県がこの計画を承認すれば支援が受けられる。支援策には、農地転用許可や緑地面積率などの規制緩和、研究開発や設備投資への補助金交付、設備投資減税、政府系金融機関の金融支援などがある。
[矢野 武 2018年6月19日]