日本大百科全書(ニッポニカ) 「地方落穂集」の意味・わかりやすい解説
地方落穂集
じかたおちぼしゅう
江戸時代の地方書(じかたしょ)の一つ。正編の成立年代と著者については、「宝暦(ほうれき)十三癸未孟春武陽隠士泰路」とあり、1763年の成立であることが知られるが、泰路なる者の本姓名はつまびらかでない。内容は検地、高(たか)、石盛(こくもり)、検見(けみ)、石代納(こくだいのう)などをはじめとし、訴訟、仕置(しおき)なども具体的に書式をあげて述べている。記述は雑然としていて、系統的でないが、その内容は非常に豊富で、広く地方に関することに触れていて、後代にも影響を与えている。たとえば、化政(かせい)期(1804~30)に『続地方落穂集』(全6巻)が出て、触書(ふれがき)などを収録するとともに代官行政や土木普請(ふしん)について記し、天保(てんぽう)末・弘化(こうか)初年(1840年代中葉)には『地方落穂集追加』(7巻)、『地方落穂集続々編』と称する『聞伝叢書(ぶんでんそうしょ)』(11巻)などが出ているのは、その影響を示している。いずれも筆者は不明であるが、地方関係の触書その他を収載している。本書は江戸時代における法制経済の資料をほとんど遺漏なく網羅し、江戸期の地方法制ならびに慣習を知るには必須(ひっす)のものである。『日本経済叢書』第9巻、『日本経済大典』第24巻所収。
[三橋時雄]
『瀧本誠一著『日本経済典籍考』(1928・日本評論社)』