基礎工(読み)きそこう(英語表記)foundation practice

日本大百科全書(ニッポニカ) 「基礎工」の意味・わかりやすい解説

基礎工
きそこう
foundation practice

上部構造から作用する荷重を、信頼できる地盤に伝達、支持させる構造物で、直接基礎、杭(くい)基礎、ケーソン基礎に大別される。建築用語では、基礎工のうち基礎スラブより下に設ける杭などを称して地業(ちぎょう)という。

河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]

直接基礎

構造物を基礎地盤上に直接支持させる形式の基礎。1本の柱を支持する独立フーチングfooting、2本以上の柱や壁を支持する帯状のフーチング、フーチングを地中梁(ばり)で連結したもの、べた基礎あるいはいかだ基礎またはラフトraft基礎ともよばれる単一の版で多くの柱や壁を支持するものなど、種々の形式がある。直接基礎は、地表面から比較的浅いところに良好な支持層がある場合は一般に経済的である。構造物の重要性、規模、荷重の大きさなどによって異なるが、通常、岩盤、十分締まった砂または砂礫(されき)層、硬質粘土層などは良質な支持層とみなしうる。地盤が軟弱な場合には、沈下による影響、とくに不同沈下による悪影響をできるだけ受けにくい構造形式を選ぶことが必要である。緩い砂層では地震時に基礎地盤の液状化を生じることがあるので注意を要する。条件によっては地盤を改良する必要が生じる。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]

杭基礎

既製杭や場所打ち杭を用いる深い弾性体基礎。支持層が深く直接基礎が適用できないような場合に用いられる。ケーソン基礎と並ぶ深い基礎の一つであるが、一般に工費および工期の面ではケーソン基礎に比べて有利であることが多い。材料、施工法とも多様で選択の幅が大きい利点があり、断面、長さとも各種のものが施工可能である。

 近年、構造物の大型化、支持力の大きい深い基礎を確実かつ迅速に施工することの必要性などから、杭基礎の施工技術は急速に向上しており、順次大径かつ長尺の杭が施工可能になってきた。小型のケーソンに近い断面の大径杭も施工され、従来ケーソン基礎で施工された分野にまで杭基礎が広く採用される傾向にある。深度が70~80メートルに及ぶ長尺杭の施工実績も多い。軟弱層が厚く、長尺杭を必要とするところでは、杭に作用する下向きの摩擦力(ネガティブフリクションnegative friction)に対処する必要があり、この対策工法も種々考案され実用に供されている。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]

ケーソン基礎

地上で製作した箱状または筒状の基礎躯体(くたい)(ケーソンcaisson)の底部から地盤を掘削しながら沈下させて設置する基礎。設計上は剛体基礎として取り扱われる。古くから橋梁(きょうりょう)基礎をはじめ重要構造物の基礎に多用され、数多くの施工実績がある。安定性、耐久性の点で深い基礎としてはもっとも信頼できる基礎形式とされている。施工法によりオープンケーソンopen caissonとニューマチックケーソンpneumatic caissonに大別される。

 オープンケーソンは、ケーソン内部の土砂を大気中または水中で掘削し、排出するもので、比較的簡単な設備で施工できる利点がある。しかし、掘削地盤内に転石や障害物があると施工が困難であり、周辺地盤を緩めやすいなどの短所がある。

 ニューマチックケーソンは、施工中ケーソン内に浸入する水を排除するため、躯体下部に圧縮空気を送り込む気密作業室を設けるものをいい、水の妨害を受けず、支持地盤を直接確認しながらの施工が確実であり、あらゆる土質に適用でき、障害物の除去が可能である、などの利点がある。反面、特殊な機械設備を要し、一般に他の工法に比べて割高となること、高気圧下の作業となるため施工深さに制約があること、大型コンプレッサーを用いるため騒音、振動が問題になること、などの短所がある。

 近年、ケーソン基礎と杭基礎の中間的な性質をもつ鋼管矢板式基礎や地下連続壁基礎が開発され、また海峡横断橋の海中基礎としてきわめて大規模の設置ケーソンや多柱式基礎が施工されるなどの動きがある。このため「ケーソン」「杭」の概念も多様化する傾向にある。

[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の基礎工の言及

【基礎】より

…基礎工とも呼ばれる。建築物や橋,ダムなどの構造物の自重による鉛直方向の荷重や,地震や風によって構造物に加わる水平方向の荷重を地盤に伝えるための工作物。…

※「基礎工」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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