日本大百科全書(ニッポニカ)「声域」の解説
声域
せいいき
人が声として出しうる最高音と最低音との範囲を「生理学的声域」というのに対し、人が歌唱に使用することのできる声の高低の範囲を「音楽的声域」という。ただし、一般的には声域とだけいって、後者を意味する場合が多い。この音楽的声域は、おおむねE2からF6までの約4オクターブにわたっているが、そのうち一個人の声域は、およそ2オクターブの範囲に限られている。音楽的声域を大きく四声作法に分けると、女声のソプラノとアルト、男声のテノールとバスになる。さらに声楽の分野では、これらの類型に加え、ソプラノとアルトの中間にメゾ・ソプラノを、テノールとバスの中間にバリトンを交えて六つの分割がなされる。これらの各音域は、 に示すとおりである。ただ、この譜表はあくまでも平均的なものであるため、最高音はB5音となっているが、コロラトゥーラとよばれるソプラノのもっとも高いものには、F6を必要とするような声域もある。なお、このような音域による分類を基にし、声の音色の特性や声区の変換域などを考慮して、歌手の声種は決定される。
[黒坂俊昭]