西洋音楽の記譜法体系において,ふつう音高を表示するために水平に引かれた数本の平行線を指す。歴史的には線の意味や数に応じてさまざまな種類があるが,17世紀以降今日に至るまで,5線譜表が最も一般的に使用されている。
5線譜表(5線譜)は基本的には五つの線と四つの間(かん)からなり,隣接する二つの線(間)は3度音程を表す。音符や休符はこれらの線上または線間に記されるが,5線の音域を上下に3度以上越える場合は,臨時に短い加線(かせん)が加えられる。譜表に付随する記号には,このほか音部記号,調号,拍子記号,縦線,複縦線,連結括弧(ブレース)などがある。音部記号によって特定の線の音高が定められ,自動的に他の線の相対音高と譜表全体の基本音域も確定される。使用される音部記号の種類によって,ト音譜表(高音部譜表),ハ音譜表(ハ音記号の位置によってソプラノ譜表,アルト譜表,テノール譜表ともいう),ヘ音譜表(低音部譜表)などという。曲頭では音部記号,調号,拍子記号の順で記されるが,音部記号と調号は譜表の段が変わるごとに常に左端に明記されるのに対し,拍子記号は曲頭以外では省略される。ただし曲の途中で音域,調,拍子が変化し,そしてそれらを明示する場合は,それぞれに該当する記号だけが書き換えられる。調号以外にも個々の音符の前に変化記号を置いて,音高さらには調の変化を示すことも行われる。縦線は小節の仕切りを表す小節線として5線上に記されるが,定量記譜法による多声音楽を現代5線譜に直す場合には,譜表間に引かれることもある(定量線)。複縦線は音楽の段落や楽章の切れ目,調や,ときには拍子の変り目などで用いられる。とくに右側の線が太いものを終止線ともいい,楽章や曲の終止記号として使用される。反復記号も複縦線の一種である。二つ以上の譜表を連結括弧と長い縦線で上下にそろえてまとめたものを連合譜表ということがあるが,これには大譜表やスコア(総譜)などが含まれる。大譜表はト音譜表とヘ音譜表の二つからなり,とくに鍵盤楽器のための音楽では最も基本的な記譜法である。スコアは多声の声楽曲や合奏曲などにおいて,声部別もしくは楽器別に記された多数の譜表をひと目で見られるようにまとめたもの。なお,今日では邦楽を含めた諸民族の音楽を西洋式5線譜表に翻訳することも盛んに行われている。
→楽譜
執筆者:土田 英三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
西洋音楽で音高を示すために用いる一組の水平な平行線のことをいう。線とそれに挟まれる間(かん)によって音高が決定され、その範囲を越える音高に対しては臨時に加線がつけられる。線の数は時代によって異なり、17世紀以降は5本が一般的であるが、グレゴリオ聖歌は、いまなお四線で書かれている。それぞれの線や間がどの音高を示すかについては、譜表の最初に置かれた音部記号が決定する。
なお、ピアノやハープやオルガンのための楽曲には二つまたは三つの譜表が左端の括弧(かっこ)と長い縦線で結び付けられた大譜表、シンバルや太鼓のような音高が不明瞭(ふめいりょう)な打楽器のための楽曲には1本の水平線だけからなる譜表が用いられる。
[黒坂俊昭]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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