壺銭(読み)つぼせん

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改訂新版 世界大百科事典 「壺銭」の意味・わかりやすい解説

壺銭 (つぼせん)

中世において酒造業者に課せられた酒造役は,その醸造用壺数に応じていたため,酒壺銭または単に壺銭といわれていた。壺銭は月ごとに年間12回課せられる定期的なものと,臨時のものとがあった。定期的なものは,その醸造の実態に応じて本役と半役とがあり,半役は本役の半額に当たり,半公事ともいわれた。壺銭徴収に先立って酒造業者の営業状態を検知するために,醸造壺の実数調査をするのが普通であった。壺銭はもともと皇室財源であったが,1393年(明徳4)からは室町幕府の財源となり年間に6000貫文に達した。臨時役は天皇即位,将軍宣下の時の諸費用に充てられたりしたが,戦国時代以降は幕府の財源にも充てられ,月ごとに課せられたほどである。しかし壺銭がしだいに過重となると,免除特権を得ようとする動きや廃業するものも増え,かえって幕府の収入は増加しなかった。酒造業は畿内地方のみならず,各地で発展し,それぞれの地域の大寺社などが壺銭を課したが,大和菩提山寺の酒造業に対して奈良興福寺が壺銭を課したのなどは,その例である。
酒屋役
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「壺銭」の意味・わかりやすい解説

壺銭
つぼせん

鎌倉,室町時代に酒壺1個を単位として課した酒造税。酒壺銭ともいう。室町幕府は明徳4 (1393) 年以後京都とその周辺の酒屋から毎月恒例の課役として徴収した。奈良では興福寺が菩提山寺に壺銭を賦課している。

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