夏虫(読み)なつむし

精選版 日本国語大辞典 「夏虫」の意味・読み・例文・類語

なつ‐むし【夏虫】

〘名〙
① 夏現われる虫。特に、夏の夜、灯火に慕い寄ってくる青蛾などの虫。火取虫。夏虫の火虫。《季・夏》
万葉(8C後)九・一八〇七「夏虫の 火に入るがごと」
古今(905‐914)恋二・六〇〇「夏むしを何かいひ劔(けん)心から我もおもひにもえぬべら也〈凡河内躬恒〉」
※後撰(951‐953頃)夏「ほたるをとらへて〈略〉汗衫(かざみ)の袖に包みて つつめども隠れぬ物は夏虫の身よりあまれる思ひなりけり〈よみ人しらず〉」
③ 昆虫「せみ(蝉)」の異名。
※後撰(951‐953頃)夏・一九四「八重葎繁き宿には夏虫の声より外に問(とふ)人もなし〈よみ人しらず〉」
④ 昆虫「か(蚊)」の異名。
※藻塩草(1513頃)一二「夏虫のこゑ、蚊也」
⑤ 夏、子どもにできる瘡。なつぶし。
夏蚕(なつご)。→夏虫のひむし

か‐ちゅう【夏虫】

〘名〙 夏の虫。氷を知らないことから世事にうといことにいう。
※本朝文粋(1060頃)三・神仙都良香〉「夏虫短慮。終昧弁於冬冰」 〔荘子秋水

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「夏虫」の意味・読み・例文・類語

なつ‐むし【夏虫】

夏の虫。夏の夜、灯火に寄ってくる虫。火取り虫 夏》「―や夜学の人の顔をうつ/召波
ホタルの異名。
「―の影見し沢のわすれ水思ひ出でても身はこがれつつ」〈続千載・恋四〉
セミの異名。
「八重むぐらしげき宿には―の声よりほかにとふ人もなし」〈後撰・夏〉
夏沸瘡なつぶし」に同じ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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