外陰癌(読み)がいいんがん(英語表記)carcinoma vulvae

改訂新版 世界大百科事典 「外陰癌」の意味・わかりやすい解説

外陰癌 (がいいんがん)
carcinoma vulvae

女性の外陰,すなわち恥丘,大陰唇,小陰唇,陰核,腟前庭,外尿道口,腟入口部,会陰およびそれらの付属器官に発生する癌の総称。婦人科の癌の1~2%と比較的まれな疾患であるが,高年者に多い。大部分扁平上皮癌で,ほかに腺癌,まれには悪性黒色腫などがある。はじめは小さい腫瘤や浅い潰瘍であるが,しだいに増大して大きな腫瘤となり,腟,尿道,直腸などにひろがり,また鼠径部(そけいぶ)のリンパ節さらに骨盤内のリンパ節にも転移する。治療法は,手術と放射線治療がある。手術は,初期では病巣部分のみを切除することもあるが,原則的には外陰を摘出し,鼠径部のリンパ節を摘出する。

 外陰癌は体の表面に発生するから診断は容易なはずだが,実際には,単なるできものと思って軟膏などを自分で塗り,病気が進行してから受診することが少なくない。外陰部にできものや傷を見つけたら,すぐに婦人科を受診する必要がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「外陰癌」の意味・わかりやすい解説

外陰癌
がいいんがん

女性性器の外陰部に発生する癌で、女性性器癌のうちでは比較的まれなもの(3~5%)である。大部分は皮膚組織を発生母地とする扁平(へんぺい)上皮癌である。外陰部が肥厚して灰白色となる外陰白斑(はくはん)症や、皮膚が萎縮(いしゅく)して頑固なかゆみを訴える高齢者に多い外陰萎縮症が前駆症といわれる。大陰唇に多発し、初期には硬いしこりを認める程度であるが、進行すると潰瘍(かいよう)をつくり、やがてカリフラワー状に盛り上がる。かゆみ、灼熱(しゃくねつ)感、疼痛(とうつう)を訴える。治療は広範囲にわたる外陰部の摘出手術が一般的で、放射線療法も行われる。最近はブレオマイシンなど有効な抗癌剤も開発されているが、一般には予後良好とはまだいえない。

[新井正夫]

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