江戸時代に成立した弓術流派で、流祖は因幡(いなば)国(鳥取)生まれの森川香山(こうざん)(1631―1701)。香山は幼名を喜忠(のぶただ)、秀一(ひでかず)などといい、後に宗兵衛(そうべえ)、四郎左衛門と称し、僖風(きふう)、観徳軒(かんとくけん)などと号した。幼少より弓術の才能に恵まれその力は抜群であったという。祖父や父の薫陶を受け、成人ののちは各地の有力な弓術家を訪ねさらに研鑽(けんさん)を重ね、逸見(へんみ)流、道雪(どうせつ)派、山科(やましな)派、印西(いんさい)派、竹林(ちくりん)派、さらには武田流、小笠原(おがさわら)流などを勘案して1652年(承応1)ごろ神道思想を背景に仏教の教えをもとり入れた大和流を創始した。この大和流という名称は(1)日本は大和の国といい、その弓道がりっぱであることを教えるため、(2)日置(へき)流の祖が大和国の出身であることを忘れないため、(3)大和は邪心慢心を戒め大い和ぐという意味があることに由来するとしている。大和流は三男僖凭(よしのり)(中和堂香有子(ちゅうわどうこうゆうし))が継ぎ代々島原藩で定着し繁栄した。同流からは多くの弓書が著されており、また従来にない独特の教習法が編み出されている。
[入江康平]
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