アメリカ合衆国大統領の行政上の最高機関。三権分立のこの国では、立法府の最高機関である連邦上下両院(通称キャピトル・ヒル)、司法権の最高機関である連邦最高裁判所とともにワシントンDCにあるが、大統領は連邦行政の長のほか、国家元首、さらに陸・海・空・海兵の四軍の最高司令官をも兼ね、かつ、イギリス、日本のような議院内閣制ではないため、大統領府は文字どおりアメリカ国家の中心的な存在である。1933年就任のF・D・ルーズベルト大統領以来、大統領の機能と権限も大幅に拡大されてきたため、大統領府の機構とスタッフも巨大化し、いまでは、公式の大統領府の建物ホワイトハウスで執務するのは正副大統領とその直属要員だけであって、政治的、制度的にも重要な国家安全保障会議、行政管理・予算局を含めその他の部局はホワイトハウスの西側にある敷地内の大統領府ビルディングにオフィスを置いている。
歴史的には1930年代のニューディール期には、最高裁が、行政府である大統領府の肥大化する権限を制限しようとする一連の判決が下され、また70年代のベトナム戦争とウォーターゲート事件のあと、立法府である連邦議会が大統領府の強大な権限を抑制しようとする動きが続いてきた。なお、大統領が内外への旅行などで移動するときには、大統領府の全スタッフではないが、核攻撃指令のブラックボックスをも含め、主要なスタッフとその必須(ひっす)装置は随行し、移動先が臨時の大統領府となる。
[陸井三郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし,20世紀に入り,国家機能の拡大に伴い行政業務も増大し,ことにF.D.ローズベルト大統領時代に,内にニューディール,外に第2次大戦と,政府の機能は飛躍的に拡大し,大統領の強い政治指導が要請されるにいたった。ここに多忙な,強力であるべき大統領にとってその分身ともいうべき側近が必要とされ,ローズベルトの時代にはブレーン・トラストとしてスタッフが強化されたが,1939年には大統領府Executive Office of the Presidentが設置され,今日ではホワイト・ハウス事務局,管理予算局,国家安全保障会議,中央情報局(CIA)など強力な機関が各省と別に大統領に直属している。ことに,ホワイト・ハウス事務局の補佐官は,大統領の政策決定に大きな影響力をもち,大統領とこれらのスタッフに広範な権限が集中され,ついにはニクソン大統領時代の〈帝王的大統領〉制との批判をうけるまでにいたる。…
…元来,大統領は一身に元首,行政首長,三軍の最高司令官の職を帯び,多能多才でなければならないが,ことに1930年代から内に外に国家機能が著しく拡大し,大統領は多忙を極め,多くの分身を必要とするにいたった。かくして39年大統領府Executive Office of the Presidentが設置され,私的なブレーン・トラストは公的な制度となり,その中にホワイト・ハウス・スタッフが正式に置かれるようになった。ただ,このスタッフの権限があまりに強大化すると,帝王的大統領制の原因ともなり,大統領直属のスタッフとラインとしての行政各省との調整は微妙である。…
※「大統領府」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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