天国と地獄(読み)テンゴクトジゴク

デジタル大辞泉 「天国と地獄」の意味・読み・例文・類語

てんごくとじごく〔テンゴクとヂゴク〕【天国と地獄】

原題、〈フランスOrphée aux Enfersオッフェンバック作曲のオペレッタ。1858年パリで初演ギリシャ神話オルフェウス悲話戯画化したもの。

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精選版 日本国語大辞典 「天国と地獄」の意味・読み・例文・類語

てんごくとじごく‥とヂゴク【天国と地獄】

  1. ( 原題[フランス語] Orphée aux enfers ) 喜歌劇。四幕。オッフェンバック作曲。一八五八年パリ初演。オルフェウスの伝説をオペレッタ化したもので、大正時代から日本でも親しまれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天国と地獄」の意味・わかりやすい解説

天国と地獄(映画)
てんごくとじごく

日本映画。1963年(昭和38)作品。黒澤明(くろさわあきら)監督。1960年代に入るとテレビの普及もあって、日本映画の興行は下降線をたどっていく。そうしたなか、黒澤は『用心棒』(1961)、『椿三十郎(つばきさんじゅうろう)』(1962)と、時代劇のエンターテインメント作品のヒットを放ったが、本作は現代劇によるサスペンス映画である。原作はアメリカの推理作家エドマクベインの『キング身代金』。冒頭は横浜の丘に建つ豪邸の一室。主人公の製靴会社専務(三船敏郎(みふねとしろう))の息子と間違えられて、専務の運転手の息子が誘拐されたいきさつが語られる。室内に限定した静的なスタートから、一転、特急列車から身代金の入ったかばんを放り投げるというスピード感あふれるサスペンスヘと展開、さらに犯人(山崎努(やまざきつとむ)、1936― )と警察の駆引きへと物語は進んでゆく。ダイナミックな映像と巧みなストーリー・テリングで、黒澤監督ならではの緻密(ちみつ)な構成をみせた。貧しいインターンの犯人と裕福な主人公との階層的・世代的な対立も重ねあわせてあるが、あまり成功しているとはいえない。1950年代にピークを超えた映画のリアリズム表現は、それを特化させ抽象・局所化するケースとして、サスペンス映画の可能性を浮上させていたが、本作はその見事な例証であり、新たな領域の確立を果たした作品といえよう。

[千葉伸夫]


天国と地獄(音楽)
てんごくとじごく
Orphée aux Enfers

オッフェンバック作曲のオペレッタ。全二幕。1858年パリ初演。原題は「地獄のオルフェ」だが、日本では1914年(大正3)東京・帝国劇場で初演以来、このタイトルで親しまれている。グルックの歴史的なオペラオルフェオとエウリディーチェ』のパロディで、オルフェ(オルフェウス)は羊飼いの女を、妻のエウリディーチェ(エウリディケ)は羊飼いの男、実は地獄の王を愛していて、夫婦げんかが絶えない。王は彼女がヘビに咬(か)まれたのを幸いに、地獄へ連れて行く。オルフェは喜ぶが、人間社会を代弁する世論にたしなめられ、天国のジュピターのところへ妻を連れ戻しに行く。ところがジュピターはエウリディーチェを見て一目ぼれ。連れ帰ってもいいが、三途(さんず)の川を渡るとき、振り向いてはならないという。2人が川を渡りきろうとしたとき、雷鳴とどろき、オルフェは振り向いてしまう。そしてオルフェは羊飼いの娘と、エウリディーチェはジュピターと結ばれて大喜びだが、世論と地獄の王は浮かぬ顔である。オペレッタの原点ともいうべき作品で、フィナーレを飾るガロップ調のバレエ音楽は、フレンチ・カンカンの音楽として世界を席巻(せっけん)し、無声映画の大活劇の伴奏音楽としてもよく使われた。

[寺崎裕則]

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デジタル大辞泉プラス 「天国と地獄」の解説

天国と地獄〔映画〕

1963年公開の日本映画。エド・マクベインの小説『キングの身代金』の映画化。監督・脚本:黒澤明、脚色:小国英雄ほか、撮影:中井朝一、斎藤孝雄。出演:三船敏郎、香川京子、江木俊夫、佐田豊、島津雅彦、仲代達矢、石山健二郎ほか。第18回毎日映画コンクール日本映画大賞、脚本賞受賞。

天国と地獄〔オペレッタ〕

ドイツ生まれのフランスの作曲家ジャック・オッフェンバックのフランス語による全2幕のオペレッタ(1858)。原題《Orphée aux enfers》。

天国と地獄〔小説〕

赤川次郎の長編ミステリー。2008年刊行。

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世界大百科事典(旧版)内の天国と地獄の言及

【オッフェンバック】より

…代表作に《地獄のオルフェ》(1858。邦題《天国と地獄》),遺作のオペラ《ホフマン物語》(1881,ギローが補筆完成)などがある。【片山 千佳子】。…

【オルフェウス】より

…オッフェンバックの《地獄のオルフェ》(1858。日本での曲名《天国と地獄》)は,同一題材をパロディ化したものである。【服部 幸三】。…

※「天国と地獄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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