日本映画。1963年(昭和38)作品。黒澤明(くろさわあきら)監督。1960年代に入るとテレビの普及もあって、日本映画の興行は下降線をたどっていく。そうしたなか、黒澤は『用心棒』(1961)、『椿三十郎(つばきさんじゅうろう)』(1962)と、時代劇のエンターテインメント作品のヒットを放ったが、本作は現代劇によるサスペンス映画である。原作はアメリカの推理作家エド・マクベインの『キングの身代金』。冒頭は横浜の丘に建つ豪邸の一室。主人公の製靴会社専務(三船敏郎(みふねとしろう))の息子と間違えられて、専務の運転手の息子が誘拐されたいきさつが語られる。室内に限定した静的なスタートから、一転、特急列車から身代金の入ったかばんを放り投げるというスピード感あふれるサスペンスヘと展開、さらに犯人(山崎努(やまざきつとむ)、1936― )と警察の駆引きへと物語は進んでゆく。ダイナミックな映像と巧みなストーリー・テリングで、黒澤監督ならではの緻密(ちみつ)な構成をみせた。貧しいインターンの犯人と裕福な主人公との階層的・世代的な対立も重ねあわせてあるが、あまり成功しているとはいえない。1950年代にピークを超えた映画のリアリズム表現は、それを特化させ抽象・局所化するケースとして、サスペンス映画の可能性を浮上させていたが、本作はその見事な例証であり、新たな領域の確立を果たした作品といえよう。
[千葉伸夫]
オッフェンバック作曲のオペレッタ。全二幕。1858年パリ初演。原題は「地獄のオルフェ」だが、日本では1914年(大正3)東京・帝国劇場で初演以来、このタイトルで親しまれている。グルックの歴史的なオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』のパロディで、オルフェ(オルフェウス)は羊飼いの女を、妻のエウリディーチェ(エウリディケ)は羊飼いの男、実は地獄の王を愛していて、夫婦げんかが絶えない。王は彼女がヘビに咬(か)まれたのを幸いに、地獄へ連れて行く。オルフェは喜ぶが、人間社会を代弁する世論にたしなめられ、天国のジュピターのところへ妻を連れ戻しに行く。ところがジュピターはエウリディーチェを見て一目ぼれ。連れ帰ってもいいが、三途(さんず)の川を渡るとき、振り向いてはならないという。2人が川を渡りきろうとしたとき、雷鳴とどろき、オルフェは振り向いてしまう。そしてオルフェは羊飼いの娘と、エウリディーチェはジュピターと結ばれて大喜びだが、世論と地獄の王は浮かぬ顔である。オペレッタの原点ともいうべき作品で、フィナーレを飾るガロップ調のバレエ音楽は、フレンチ・カンカンの音楽として世界を席巻(せっけん)し、無声映画の大活劇の伴奏音楽としてもよく使われた。
[寺崎裕則]
…代表作に《地獄のオルフェ》(1858。邦題《天国と地獄》),遺作のオペラ《ホフマン物語》(1881,ギローが補筆完成)などがある。【片山 千佳子】。…
…オッフェンバックの《地獄のオルフェ》(1858。日本での曲名《天国と地獄》)は,同一題材をパロディ化したものである。【服部 幸三】。…
※「天国と地獄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新