精選版 日本国語大辞典 「太鼓持ち」の意味・読み・例文・類語
たいこ‐もち【太鼓持・幇間】
- 〘 名詞 〙
- ① 太鼓を持つこと。また、その人。
- [初出の実例]「にはかに芸道はならぬじゃ程に、太こをもてといふて、太こもちにする」(出典:虎明本狂言・祇園(室町末‐近世初))
- ② 遊客に従って、その機嫌を取り、酒興を助ける男。また、それを職業とする男。太鼓衆。男芸者。末社。弁慶。ほうかん。
- [初出の実例]「きぬやの与助とて、町がよひにはづれもせぬ、江戸一番のたいこもち、彼を召し連れ御なぐさみあるべし」(出典:仮名草子・元の木阿彌(1680)上)
- ③ 人に追従してその歓心を買うもの。太鼓叩き。
- [初出の実例]「ぬし有女のたいこ持ついせうづらのむやくし寺」(出典:浄瑠璃・兼好法師物見車(1710頃)四季)
太鼓持ちの語誌
( ②について ) ( 1 )職業としての太鼓持が現われたのは、湯水のように金を使う「大尽遊び」が流行した元祿期のことと考えられる。当初は、遊里の案内から、諸事の差配、連絡に至るまで、さまざまな雑務を行なっていた。大尽遊びが下火になった宝暦年間には、もっぱら宴席を盛り上げる芸人として定着したが、今日ではほぼ途絶えている。
( 2 )芸としては、地口(じぐち)・声色(こわいろ)・物真似・舞踊のほか、扇子や衣桁(いこう)などの身近な物を用いた演技や狂態など、滑稽なものが主である。ただし、多くは一中節(いっちゅうぶし)・清元(きよもと)などの音曲を身に付けていた。