日本音楽の用語。(1)最も広義には音楽の別称として用いられる。江戸時代の中期以降の音楽関係の書名に《音曲口伝書》など〈音曲……〉と使われている。(2)広く芸能をさす。貴人の不幸などに際し一般人にもすべての鳴物の停止を命じて静粛に弔意を表しめる制令の〈歌舞音曲停止(ちようじ)〉という場合には,音楽を伴う芸能の意。(3)俗曲と同じく卑俗な音楽の意。寛政(1789-1801)末ごろ,初代船遊亭扇橋のはじめた音曲噺(おんぎよくばなし)は,落語の間に下座(げざ)の三味線に合わせて歌をうたったもの。その後これに似せて俗曲や流行歌(はやりうた)をうたって人気を博したものを音曲師といった。また寄席で演奏される音楽芸を〈音曲吹き寄せ〉と称し明治時代に流行した。また文化・文政(1804-30)以降,江戸市中に多く生まれた女性の音楽家は,長唄や常磐津などの表芸以外のものも教えたので,俗に〈五目(ごもく)の師匠〉といわれ,幕末には俗曲や舞踊も教えるようになり,音曲師匠,町師匠,女師匠などと呼ばれた。
執筆者:竹内 道敬
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…明治初年の新造語で,雅楽に対して民謡,端唄,長唄,義太夫などの三味線音楽や,流行歌(はやりうた),箏曲など庶民の音楽を指した。明治中期以降は,寄席で演じる音曲の代名詞となった。代表曲は《深川》《奴さん》《大津絵》《かっぽれ》など。…
※「音曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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