衣服などを掛ける家具。古くは御衣懸(みぞかけ),衣架(いか)とよばれていたが,室町末期ころから衣桁と変わった。御衣懸は和語,衣架,衣桁はともに漢語である。平安時代の《類聚雑要抄(るいじゆうぞうようしよう)》によると鳥居形で下にこれを立てる台があり,横桁7尺(約210cm),柱高5尺1寸,台高3寸,棹(さお)は漆塗で,蒔絵のあるものは上等品で,棹の両端には金銅の飾金具がつく。実用として使われるほか,色彩の乏しい寝殿造の建物の中で,華やかな衣装を掛けた衣桁は室内装飾としての意味も大きかった。この風習は近世,近代の婚礼式にまで踏襲されている。一方,江戸中期から二つ折りの衣桁屛風が生まれ,明治以後にはこれが主流になった。衣桁にはもう一種簡略な釣式がある。3,4尺(120cm)ほどの横棹の両端を釣るもので,棹とよばれ,二階棹,三階棹もあった。竹製もある。このほか江戸時代になってできたものに着物を1枚ずつ袖を通して掛ける衣紋棹(えもんざお)がある。
執筆者:小泉 和子
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着物などを掛けておく家具。平安時代から用いられ、衣架(いか)、御衣(みそ)掛けなどとよばれた。鳥居形で、脚にこれを立てる台がついている。角柱か丸柱でつくられ、木地には、ニス、または黒漆、朱漆が塗ってある。蒔絵(まきえ)で、装飾金具をつけたもの、彫刻を施した豪華なものも用いられた。衣桁は寝所用のほか、晴(はれ)のとき、衣装を掛けて室内装飾の役目も果たした。衣装の掛け方には一定の方式があり、これは江戸時代の婚礼式にも及んだ。かつては家具調度として用いられた衣桁も、現在は販売用の着物や染織工芸品の展示に使われることが多い。明治ごろから使われた屏風(びょうぶ)式は、丁番(ちょうつがい)がつき、真ん中から二つ折りに畳めるもので、部屋の隅に直角に置く。脱いだ着物の汗取りと皺(しわ)伸ばしに用いられる。家庭のほか、旅館などに備え付けてある。
[岡野和子]
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