衣桁(読み)イコウ

デジタル大辞泉 「衣桁」の意味・読み・例文・類語

い‐こう〔‐カウ〕【衣桁】

室内衣類などを掛けておく道具。木を鳥居のような形に組んで、台の上に立てたもの。衝立ついたて式のものと、2枚に折れる屏風びょうぶ式のものとがある。衣架いか御衣みぞ懸け。衣紋掛け。

ゆ‐こう〔‐カウ〕【桁】

いこう(衣桁)」の音変化。
「―に…小袖かけてあるゆゑ」〈黄・艶気樺焼

え‐こう〔‐カウ〕【桁】

いこう(衣桁)」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「衣桁」の意味・読み・例文・類語

い‐こう‥カウ【衣桁】

  1. 〘 名詞 〙 衣服をかけておく台。鳥居のような形の、ついたて式のものと、真中から二枚に折れる折り畳み式とがある。衣架(いか)御衣(みぞ)かけ。ころもざお。いこ。〔文明本節用集(室町中)〕
    1. 衣桁
      衣桁
    2. [初出の実例]「次の間には絵莚(ゑむしろ)をしき、衣桁(イカウ)にゆかた、下帯をかけて相まつ」(出典評判記色道大鏡(1678)三)

え‐こう‥カウ【衣桁】

  1. 〘 名詞 〙いこう(衣桁)
    1. [初出の実例]「昔からあるといふ衣桁(エカウ)には若い人の着るものなぞが無造作に懸けてある」(出典:破戒(1906)〈島崎藤村一二)

ゆ‐こう‥カウ【衣桁】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「いこう(衣桁)」の変化した語 ) 着物をかけておくための、鳥居の形をした台。
    1. [初出の実例]「守りをばゆこうへ懸るにさい客」(出典:雑俳・柳多留‐三(1768))

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改訂新版 世界大百科事典 「衣桁」の意味・わかりやすい解説

衣桁 (いこう)

衣服などを掛ける家具。古くは御衣懸(みぞかけ),衣架(いか)とよばれていたが,室町末期ころから衣桁と変わった。御衣懸は和語,衣架,衣桁はともに漢語である。平安時代の《類聚雑要抄(るいじゆうぞうようしよう)》によると鳥居形で下にこれを立てる台があり,横桁7尺(約210cm),柱高5尺1寸,台高3寸,棹(さお)は漆塗で,蒔絵のあるものは上等品で,棹の両端には金銅の飾金具がつく。実用として使われるほか,色彩の乏しい寝殿造の建物の中で,華やかな衣装を掛けた衣桁は室内装飾としての意味も大きかった。この風習近世,近代の婚礼式にまで踏襲されている。一方,江戸中期から二つ折りの衣桁屛風が生まれ,明治以後にはこれが主流になった。衣桁にはもう一種簡略な釣式がある。3,4尺(120cm)ほどの横棹の両端を釣るもので,棹とよばれ,二階棹,三階棹もあった。竹製もある。このほか江戸時代になってできたものに着物を1枚ずつ袖を通して掛ける衣紋棹(えもんざお)がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「衣桁」の意味・わかりやすい解説

衣桁
いこう

着物などを掛けておく家具。平安時代から用いられ、衣架(いか)、御衣(みそ)掛けなどとよばれた。鳥居形で、脚にこれを立てる台がついている。角柱か丸柱でつくられ、木地には、ニス、または黒漆、朱漆が塗ってある。蒔絵(まきえ)で、装飾金具をつけたもの、彫刻を施した豪華なものも用いられた。衣桁は寝所用のほか、晴(はれ)のとき、衣装を掛けて室内装飾の役目も果たした。衣装の掛け方には一定の方式があり、これは江戸時代の婚礼式にも及んだ。かつては家具調度として用いられた衣桁も、現在は販売用の着物や染織工芸品の展示に使われることが多い。明治ごろから使われた屏風(びょうぶ)式は、丁番(ちょうつがい)がつき、真ん中から二つ折りに畳めるもので、部屋の隅に直角に置く。脱いだ着物の汗取りと皺(しわ)伸ばしに用いられる。家庭のほか、旅館などに備え付けてある。

[岡野和子]

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百科事典マイペディア 「衣桁」の意味・わかりやすい解説

衣桁【いこう】

〈御衣懸(みぞかけ)〉〈衣架(いか)〉とも。室内に置いて衣服を掛ける家具。形は鳥居に似て,台のある2本の柱に横木を渡す。黒漆塗,金蒔絵(まきえ)を施したものもある。現代では蝶番(ちょうつがい)で中央から折りたためるものが主流であるが,一般家庭ではほとんど用いられない。

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「衣桁」の解説

いこう【衣桁】

室内に置き、和服などの衣服を掛けるときに用いる和家具。台に鳥居形の棹(さお)を付け、上段に着物、下段に袴(はかま)を掛ける。蝶番(ちょうつがい)で折りたためるものもある。◇「衣架(いか)」「衣紋(えもん)かけ」「御衣懸(みぞかけ)」ともいう。

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