恵比須舁き(読み)えびすかき

精選版 日本国語大辞典 「恵比須舁き」の意味・読み・例文・類語

えびす‐かき【恵ヱ比須舁・戎舁】

  1. 〘 名詞 〙 近世新年各戸を回った傀儡師(くぐつし)一種。兵庫県西宮市の恵比須神社付近を根拠地とし、首に掛けた箱の中でえびす神の人形を舞わせ、豊漁を祝い、えびす神の御影(みえい)を配って近畿一帯を回った。のちには、えびす神以外の人形も遣い、人形浄瑠璃発達に大きな影響を与えたという。えびすまわし。《 季語・新年 》
    1. [初出の実例]「ゑひすかきまいりて、御くるまよせにてまいまいらする」(出典:御湯殿上日記‐天正一一年(1583)正月一〇日)

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改訂新版 世界大百科事典 「恵比須舁き」の意味・わかりやすい解説

夷舁き (えびすかき)

摂津西宮の西宮神社を本拠地とし,首掛けの箱に入れた夷人形を舞わしながら,春の時期に家々を訪れ祝福するとともに,夷神の御姿を描いた札を配った宗教芸能者。夷まわしともいう。鯛を釣る夷の姿は漁家の信仰を得たが,多くは2人1組で簡単な劇なども演じ,天文年間(1532-55)以降京都に姿をみせ禁裏などにも推参春季の門付(かどづけ)以外には数人から数十人が一座して,大型の傀儡くぐつ)系人形を用いて劇を演じた。慶長年間(1596-1615)には当時の流行芸能である浄瑠璃と結んで,浄瑠璃操りを創始,従来の操りと競った。一方,門付の夷まわしも江戸時代を通じて存続淡路などにも根拠地があった。大型一人遣いの夷人形をもって漁村をまわる一団もあった。
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世界大百科事典(旧版)内の恵比須舁きの言及

【淡路人形】より

…戎神社は海神えびす神をまつる社で,古く水辺を漂泊していた傀儡(くぐつ)の流れをくむ集団が,そのえびす神を表現した人形を舞わして,人々の息災福運を祈った。世にいう夷舁(えびすか)きがそれで,室町時代に活躍し,宮廷や公家の邸にも参って祝賀の芸を演じた。その一派が淡路にも渡って座を構えたが,関ヶ原の戦のあと蜂須賀氏が淡路,阿波の領主となり,その人形座に手厚い庇護を与えた。…

【翁】より

…日本の各種の古典芸能に演じられる儀式的祝言曲。中世の猿楽能をはじめ,田楽能,近世の人形浄瑠璃,歌舞伎,邦楽曲や,民俗芸能中の神楽,田遊び,延年,田楽などでも演じられる。
[発生]
 芸能本来の目的の一つに人の延命を願うことがあるが,その表現として老翁・老媼を登場させることが古くからあったらしく,平安時代の田植行事などにみられる。しかし翁面をつけた者が舞や語りを演じる芸能は,猿楽の中に最も早くみられ,〈翁猿楽〉とか〈式三番〉と称せられた。…

【傀儡】より


[中国]
 魁,窟などとも書かれる。殉死者の代用物である明器(めいき)に起源するとの考えもあるが,漢の応邵の《風俗通》の佚文に〈魁,喪家の楽〉とある傀儡は,追儺(ついな)の日,黄金四目の面に,熊皮をかぶり,玄衣朱裳の身ごしらえをし,戈(か)と盾を手に悪鬼を追う方相面に由来するといわれる。方相の頭が大きく畏怖すべき貌を形容したのが,もともと傀儡の意味なのである。この追儺を喪礼に行ったのが〈喪家の楽〉である。…

【でこまわし】より

…木偶(でく)回し,箱まわし,山猫まわし,首掛人形などとも称する。室町時代末期には夷舁き(えびすかき)と呼ばれる場合が多く,主要芸能は人形による猿楽能や夷舞であったが,その遣う人形をデクノボウ,でくる坊,どうこの坊などと呼んだことから,江戸時代には〈でこまわし〉〈木偶回し〉と俗称された。本来2人一組で春の町を門付して歩き,1人が3体ぐらいの人形を遣う。…

※「恵比須舁き」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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