改訂新版 世界大百科事典 「姥捨山」の意味・わかりやすい解説
姥捨山 (うばすてやま)
特定の年齢に達した老人を山奥に捨てるという内容の昔話。伝説としても広く分布している。《大和物語》の話は有名で,信濃更級(さらしな)の姨捨(おばすて)山の地名由来になっている(冠着(かむりき)山)。東北地方では60歳を〈木の股年〉と呼び,この歳になると,山の木の股にはさんで捨てると伝えている。姥捨山の昔話はインドが源流とされ,仏典《雑宝蔵経》に古く載せられている。棄老国の王の夢に天神が現れて,難題を解けない場合は国を滅ぼすと告げ,老人がその難題を解いたので,それ以後,棄老は廃止されたという。中国では原谷の話が《孝子伝》に出ている。原谷の知恵によって祖父が捨てられずに戻るという内容である。日本には,老人が道しるべに枝を折り,それが息子を改悛させるという話もある。いずれもかつて現実にあった風習のように伝え,老人の知恵に主眼がおかれている。これとは別に,捨てられた婆が神によって福運が授かるという話もあるが,本来の姥捨山の話とは系統を異にするものであろう。
執筆者:花部 英雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報