伊勢(いせ)神宮の古い職掌の一つ。物忌(ものいみ)の別名。「子等」とも記すように、物忌の子供たちを総称したもの。804年(延暦23)撰(せん)の『延暦(えんりゃく)儀式帳』によれば、皇大(こうたい)神宮に九物忌(大物忌(おおものいみ)・宮守(みやもり)・地祭(とこまつり)・酒作(さかとこ)・清酒作(きよさかとこ)・滝祭(たきまつり)・御塩焼(みさき)・土師器作(はじものつくり)・山向(やまげ))、豊受(とようけ)大神宮には六物忌(大物忌・御炊(みかしぎ)・御塩焼・菅裁(すがたち)・根倉(ねぐら)・高宮(たかのみや))、諸別宮にも各1人の童男や童女が置かれている。大物忌をとりわけ大子良(おこら)と称し、大物忌・宮守・地祭を三色物忌(みくさのものいみ)という。その所役は大御饌(おおみけ)の調備や奉奠(ほうてん)、正殿の開閉扉にかかわる御鎖(みかぎ)の手附初(てつけぞめ)など、もっとも神聖かつ重要なもので、禰宜(ねぎ)にも勝る祭祀(さいし)上の特権を有する。天照大御神(あまてらすおおみかみ)に朝夕近侍するためつねに厳重な斎戒・禁忌が要求され、肉親の死に際して解任されるなど、いささかも穢(けがれ)が許されなかった。幼童であるため、祭典の奉仕にあたっては物忌父(ものいみのちち)や母良(もら)・副嫗(そえのうば)などの介添え役が加わり、子良の員数も歴史を経るにつれて、しだいに減少した。
[中西正幸]
…鎮座の当時から,荒木田氏の童女がこれにあたった。中世以降は子良(こら)とも称し,馬瀬村下野村在住の権禰宜(ごんのねぎ)家である荒木田系の子女を時の大物忌父(おおものいみのちち)の養女として奉仕させた。大物忌父とは,大物忌をたすけてその職を勤め行わせる役で,他の物忌父を率いて皇大神にそなえる神饌の調理や大御饌祭に奉仕して,祝詞を奏上した。…
…その意味から,古く伊勢,春日,賀茂,鹿島,香取,平野,枚岡などの諸大社では特に〈物忌〉と称する1人ないし数人の童女(まれに童男)をおき,厳重な禁忌を課しておもに神饌や神楽を供する役などにあたらせた。伊勢では男児を〈物忌子(ものいみのこ)〉,女児を〈子良(こら)〉,その介護者を男性は〈物忌父〉,女性は〈母良(もら∥おもら)〉と呼んだ。鹿島では亀卜(きぼく)によって童女の物忌を定めた。…
※「子良」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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