学問の進歩(読み)がくもんのしんぽ(英語表記)The Advancement of Learning

日本大百科全書(ニッポニカ) 「学問の進歩」の意味・わかりやすい解説

学問の進歩
がくもんのしんぽ
The Advancement of Learning

イギリス哲学者F・ベーコン著作。1605年刊行。この作品は、吟味された経験に基づく新しい方法によって知の体系全体を革新しようとするベーコンの壮大な構想一部分にあたる。全2巻のうち第1巻では、宗教から国の統治に至る人間生活ほとんどすべての領域で知識や学問が多大の貢献をすることを示して、学問の尊厳と価値を強調する。また第2巻では、人類が現在所有している知的財産が人間の知的能力の種類に応じて、歴史、詩、哲学へと分類され、そのおのおのの現状が批判的に検討され、さらに将来の課題展望が指摘される。この作品は17世紀ヨーロッパの知的革命のなかで生まれ、またその方向づけに重要な影響を与えた。

[塚田富治]

『服部英次郎・多田英次訳『学問の進歩』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「学問の進歩」の意味・わかりやすい解説

学問の進歩
がくもんのしんぽ
Advancement of learning

イギリスの哲学者フランシス・ベーコンの著作で,1605年に英語で書かれ,のち 23年ラテン語で"De dignitate et augmentis scientiarum"として書き改められた。2巻より成り,1巻は学問の尊厳,2巻は学問の方法と分類の問題を論じ,近世における学問研究のあり方について多くの示唆を与えた。なお,本書は彼の遠大な計画大改革』 Instauratio magnaの第1部をなしており,この計画は第2部『新機関』 Novum organum (1620) を含め,全6部より成るはずのものであった。

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世界大百科事典(旧版)内の学問の進歩の言及

【イギリス経験論】より

…したがって,そうした経験的世界の構造を一貫して見通そうとしてきたイギリス経験論は,実は,イギリスの近代史がたどってきた歴史的現実それ自体の理論的自覚化として,明らかに,固有の歴史性とナショナリティとをもったイギリスの〈国民哲学〉にほかならなかった。その意味において,イギリス経験論の創始者ベーコンが,イギリス哲学史上初めて母国語で《学問の進歩》を書き,また,その掉尾を飾るスミスの主著が《国富論(諸国民の富)》と題されていたのは,けっして単なる偶然ではなかったのである。【加藤 節】。…

※「学問の進歩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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