六訂版 家庭医学大全科 「慢性腎臓病(CKD)」の解説
慢性腎臓病(CKD)
まんせいじんぞうびょう(CKD)
Chronic kindney disease (CKD)
(子どもの病気)
どんな病気か
CKDは、
原因は何か
小児のCKDは成人に比べて頻度が少なく、原因も大きく異なります。成人では
症状の現れ方
小児の慢性糸球体腎炎の多くは3歳児検診や学校検尿などで、何の症状もなく発見されます。この段階ではほとんどの場合はCKDの病期ステージはⅠで、腎機能の低下はみられません。かぜにかかった際に急性糸球体腎炎と同様の
進行にしたがって蛋白尿が増加し、やがて腎機能が低下します。腎機能障害が進行すると、高血圧、浮腫、
また、
一方、先天性の異常は、出生前後に超音波検査で発見される場合や、乳幼児では体重が増加しない、多尿、尿路感染症を繰り返すことなどの症状から発見される場合があります。また、まれですが、学校検尿で尿所見の異常や腎機能障害が発見される場合もあります。
検査と診断
急性糸球体腎炎と同様に、尿検査、血液検査を行います。小児の慢性糸球体腎炎の多くは、むくみなどの自覚症状がなく、尿検査で異常が見つかります。とくに血尿・蛋白尿ともにみられる場合は糸球体腎炎である可能性が高く、診断を確定するために
軽度の血尿のみがみられる場合は、定期的な尿検査を続けながら様子をみます。蛋白尿のみがみられる場合は、生理的な体位性蛋白尿(たいいせいたんぱくにょう)(コラム)である場合が多く、これは進行することがないため病気とは考えません。
多量の蛋白尿が続く場合や徐々に増加する場合には、やはり何らかの腎疾患である場合が多く、腎生検を含めた詳しい検査が必要になります。
また、慢性糸球体腎炎は
先天性の異常(水腎症や腎低形成、異形成など)は、尿検査で発見される場合が少なく、体重の増加不良や繰り返す尿路感染症の原因を調べる際に、発見されることがあります。超音波検査、CT検査や腎臓のシンチグラフィといった画像検査で診断を行います。
治療の方法
小児では学校検尿で早期に病気が発見される場合が多く、CKDのステージが軽い段階で治療が開始されます。CKDのステージが軽い段階では運動や食事の制限はありませんが、血尿や蛋白尿が強い時期や特別な治療薬を内服している場合には、激しい運動をひかえる必要があります。また、肥満や高血圧は慢性糸球体腎炎の進行を早めます。むしろ適度な運動や塩分をひかえた食生活が大切です。
CKDのステージが進行すると、高血圧やむくみ、
腎生検で慢性糸球体腎炎と診断された場合には、重症度や症状の強さに応じて治療を行います。炎症所見が強い場合には、ステロイド薬や免疫抑制薬に加えて抗凝固薬や抗血小板薬など種々の薬を併用して治療を行います。症状や組織所見が軽い場合には、高血圧薬と抗血小板薬のみの内服で治療を行う場合もあります。
慢性糸球体腎炎は、無治療で放置した場合には、約20年かけて30%くらいの方が末期の腎不全に進行するといわれていますが、現在は治療薬や治療法も進歩しているので、しっかりと治療を行えば病気を治すことができます。薬の内服を忘れないことや、3度の食事などの規則正しい生活を心がけることが大切です。
尿管
病気に気づいたらどうする
何の症状もなく学校検尿で初めて異常を指摘された場合は、かかりつけ医や指定の病院を受診してください。
肉眼的血尿やむくみなどの症状がある場合には、小児の腎臓病専門医がいる病院を受診します。
池住 洋平
慢性腎臓病(CKD)
まんせいじんぞうびょう(CKD)
Chronic kidney desease (CKD)
(腎臓と尿路の病気)
どんな病気か
2002年に米国腎臓財団から発表された慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)の概念と病期分類によると、CKDとは、
腎臓障害を示す所見として、①
原因は何か
CKDは、ひとつの腎疾患を意味するのではありません。腎機能低下が慢性に進行する、すべての腎疾患を包む疾患概念です。ですから、それぞれの疾患により、原因もさまざまです。
症状の現れ方
病期1~2までは、無症状であることがほとんどですが、病期3以降になるとさまざまな症状が出現します。病期3では夜間尿、軽度の
検査と診断
CKDは、蛋白尿と
病期分類(病期1~5)は、GFRの15および30の倍数で区切られ、腎移植患者である場合はT(transplantationのT)を、病期5で透析を受けている場合はD(dialysisのD)をつけます(表7)。
治療の方法
CKDには、多くの原因疾患が含まれるため、原疾患に対する治療法を選択することになります(詳細は、各論を参照)。
しかし、いずれにおいても一般療法(生活習慣病・メタボリックシンドロームの是正、感染予防、運動など)、食事療法(減塩・低蛋白食、エネルギーコントロール食など)、薬物療法(レニン・アンジオテンシン系阻害薬、カルシウム拮抗薬、副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、血糖降下薬など)、手術のなかから選択されます。
病気に気づいたらどうする
特定健診などで、尿検査所見や画像診断所見、腎機能障害を示す血液検査値に異常を指摘された場合には、腎臓専門医をすぐに受診すべきです。
これらの所見異常がみられなくてもeGFRが60ml/分/1.73m2未満の時は、CVD(心血管疾患)の危険性もあることから、心・腎疾患の経過観察を受けることが大切になります。
富野 康日己
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報