宅地建物取引士(読み)たくちたてものとりひきし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宅地建物取引士」の意味・わかりやすい解説

宅地建物取引士
たくちたてものとりひきし

宅地・建物の売買・交換・賃貸借などに関し、本人にかわって取引や契約などの法的行為を代理する国家資格宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)に基づく専門性の高い国家資格で、いわゆる士業の一種である。略称は宅建士、宅建。不動産購入者の利益保護や円滑な不動産流通のため、(1)法に定めた物件や取引条件に関する重要事項の説明、(2)重要事項説明書への記名押印、(3)契約書などへの記名・押印、などを行い、専門知識の乏しい購入者が不測損失を被るのを防ぐ役割を担っている。2019年(平成31)3月末時点で資格登録者数は約105万人、このうち実際に、不動産業(宅地建物取引業)についている者は約31万人。受験者数は1970年代の列島改造ブーム時や1980年代後半から1990年代初頭までのバブル経済期には増えたが、平時には毎年20万人程度で推移しており、人気の国家資格試験の一つである。

 建設省(現、国土交通省)が1958年(昭和33)に創設した宅地建物取引員が前身。1965年に名称宅地建物取引主任者に変わり、2015年に現名称となり、国土交通省令に基づいて都道府県知事(実際には知事から委任された指定試験機関)が実施する宅地建物取引士資格試験に合格しなければならない。合格後、実際に不動産業で働くには法定講習を受けて「宅地建物取引士証」を取得する必要がある。不動産業者は、事務所ごとに従業員の5人に1人は宅地建物取引士をおかねばならない。宅地建物取引士は宅地建物取引業法第15条で公正かつ誠実に事務を行い、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者(建築士、不動産鑑定士など)との連携に努めなければならないと規定されている。「信用失墜行為」(15条の2)を禁止され、「知識及び能力の維持向上」(15条の3)を課されており、5年ごとに宅地建物取引士証の更新講習を受けねばならない。宅地建物取引士が説明義務などを果たさずに損害を与えた場合、損害賠償の責任を負う。

 なお宅地建物取引士とは別に、不動産仲介業の実務経験がありながら、宅地建物取引士の資格をもたない従事者向けに「宅建アソシエイト」という公益財団法人不動産流通推進センターの認定資格がある。

[編集部 2019年12月13日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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