宅地建物の取引の公正を確保するための消費者保護法。昭和27年法律第176号。宅地建物の取引業を営もうとする者は免許を受けなければならない。免許基準は、いわゆる警察許可のシステムで、不許可事由となるのは、一定の犯罪歴、免許取消し歴、宅地建物取引業についての不正行為歴、不正行為のおそれが明らかであるなど、消極的な障害事由に限られ、需要と供給の関係・均衡、同業者の反対などは不許可事由にならない。免許を受けた業者が不公正な行為をしたとき、取引関係者に損害を与えたとき、本法に違反したときなどの場合には、必要な指示、免許の停止、取消しの制裁がある。免許業者はその事務所ごとに宅地建物取引主任者を置かなければならない。また、営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければならない。宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引した者は、その取引から生じた債権に関し上記の営業保証金について、弁済を受ける権利を有する。宅地建物取引については消費者保護の観点から取引自由の原則が制限されている。たとえば、誇大広告の禁止、開発許可・建築確認前の広告・契約締結の禁止、自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限、取引態様(売主か、媒介契約か、代理契約か)の明示、重要事項の書面交付による説明、契約締結に際しての書面の交付、事務所等以外の場所においてした買受け申込みの撤回、損害賠償額の予定・手付の額・瑕疵(かし)担保責任の特約の制限、前金保全、報酬の最高限度の法定などがそうである。
[阿部泰隆]
宅地や建物の売買・交換またはそれらの売買・交換・貸借の代理・仲介を業とする宅地建物取引業者に対する規制を定めた法律(1952公布)。本法制定以前は同業に対する特別の規制がなかったため,終戦後取引をめぐる紛争や事故が多発し,同業の規制を求める社会の要請の高まりを背景として,議員提案によって本法が制定された。しかし,その後も悪徳業者による被害が続出したため,1971年の大幅改正により,消費者保護の観点からの規制の強化が図られた。本法による規制の中心は免許制度に置かれており,一定の要件を満たさない者には同業の免許が与えられないこととされている。このほか,本法は,資格試験に合格した専門家である宅地建物取引主任者の設置義務,誇大広告の禁止,取引態様の明示義務,相手方に対する重要事項の説明義務など多くの規制を定めている。しかし,取引をめぐる事故や紛争はなお後を絶っていないのが現状であり,本法による適切な規制の強化が望まれている。
執筆者:晴山 一穂
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