不動産の鑑定評価を行う資格を有する者。〈不動産の鑑定評価に関する法律〉(1963)に規定がある。不動産の鑑定評価とは,土地もしくは建物またはこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し,その結果を価格に表示することをいう。不動産鑑定士になるには3回にわたる国家試験に合格することを要する。1次試験は教養試験で大学卒業者には免除される。2次試験は不動産鑑定士となるに必要な専門的学識を有するかどうかを判定することを目的とし,民法,不動産に関する行政法規,経済学,会計学および不動産の鑑定評価に関する理論について行われる。第2次試験に合格して,かつ2年以上不動産鑑定評価に関する実務に従事した者は不動産鑑定士補となる資格を有する。第3次試験は不動産鑑定士となるのに必要な高等の専門的応用能力を判定する目的で,不動産の鑑定評価に関する実務について行い,不動産鑑定士補となる資格を得てから1年間実務修習を経てはじめて受験できる。合格者が不動産鑑定士(補)となるには登録を要する。不動産鑑定士でない者が不動産鑑定業を営むには事務所ごとに専任の不動産鑑定士を置かねばならない。不動産鑑定士(補)は守秘義務を負い,国土庁長官の監督に服する。
執筆者:阿部 泰隆
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
不動産の鑑定評価(土地・建物またはこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること)を行う法律上の資格を有し、登録した者。「不動産の鑑定評価に関する法律」(昭和38年法律152号)に基づいてつくられた。国家試験である不動産鑑定士試験(短答式および論文式)に合格し、実務修習を修了して国土交通大臣の確認を受けた者が、国土交通省に備える不動産鑑定士名簿に氏名、生年月日、住所などを登録する。不動産鑑定士でない不動産鑑定業者は、その事務所ごとに専任の不動産鑑定士を1人以上置かなければならない。不動産鑑定士は、良心に従って誠実に不動産の鑑定評価等の業務を行い、不動産鑑定士の信用を傷つける行為をしてはならず、業務上知りえた秘密を漏らしてはならない。不動産鑑定士に対する監督手段として、国土交通大臣による懲戒処分があり、また不当な鑑定評価等に対する一般人からの措置要求が認められている。
[宮田三郎]
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