天皇が公の資格で発する文書の総称で、詔書、勅書、勅語などをいう。古代以来、中国に倣って、臨時の大事には詔、尋常の小事には勅を発するとされたが、その区別は厳密ではない。大宝律令(たいほうりつりょう)(701)の公式令(くしきりょう)で、初めて詔書と勅旨などの書式と発給手続が規定された。詔書の書式は5通りあって、中務(なかつかさ)省で原案を作成し、太政(だいじょう)大臣らが署名し、天皇は日付と裁可を意味する「可」を自記した。これを御画日(ごえにち)、御画可(ごえか)という。王臣に読み聞かせる詔書は国文体で、宣命(せんみょう)と称した。勅旨は、詔書よりも簡略な手続で発給された。平安時代からは、簡略な形式の宣旨、綸旨(りんじ)が盛んに発せられた。鎌倉時代以降は、内勅に類する女房奉書(にょうぼうほうしょ)が多用された。明治維新後は、事に臨んで詔勅が盛んに出されるようになり、天皇の一人称を「朕(ちん)」とし、漢語の多い独自の文語体が用いられた。1907年(明治40)公式令が制定され、詔勅の区別と形式が規定された。詔書は、皇室の大事と大権の施行に関する勅旨を国民に示すもので、天皇が署名して御璽(ぎょじ)を捺(お)し、宮内大臣、内閣総理大臣、国務大臣等が副署する。勅書は、文書による勅旨で、国民には示されない。上諭は、法律、勅令の公布に際して条文の前に付する勅旨をいう。勅語は天皇のことばで、それを文書にした勅語書も勅語という。ほかに、勅諭、御沙汰(さた)、外国に対する国書、親書がある。1947年(昭和22)日本国憲法の施行に伴い、公式令は廃止された。現在は、天皇の国事行為に関して詔書が発せられ、内閣総理大臣、最高裁判所長官の任命には勅書が出される。勅語は、53年から「お言葉」と称することに改められた。「お言葉」では、天皇の一人称は「わたくし」で、普通の文体が用いられる。
[村上重良]
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