イネのもみの稔実をよくするために,出穂以後に追肥する肥料をいう。実肥には主として窒素肥料を用いる。昔は,出穂後のイネには養分の供給は必要でなく,むしろ窒素分が水田に残って吸収されると病虫害を受けやすくなり,でき遅れによる減収もあるため,実肥は有害無益とされていた。近年になって,多収性の品種を栽培するようになると,これらは出穂後も多量の窒素を吸収していることが明らかにされ,実肥の効果が認められる場合のあることも知られるようになった。とくに稔実歩合が低く,出穂時のイネの葉の窒素含量が1.3%以下と低い場合や養分の溶脱の激しい砂質の水田では効果が期待される。実肥は10a当り硫安を窒素で2~3kg施用するが,このころはすでに根の活力が衰えており,根腐れのおそれもあるので尿素を用いることも多い。また,尿素を2%含む水溶液を10aに9~15lほどずつ2~3回イネの葉面に散布することもある。
執筆者:茅野 充男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…穂に着生するもみの数の増加,分げつの確保および止葉(とめば)の生長促進と稔実の向上などの効果が期待される。(3)実肥 出穂後に施用する追肥で,多収穫イネの栽培では広く用いられるようになった。もみの稔実向上の効果がある。…
※「実肥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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