硫安(読み)りゅうあん

世界大百科事典 第2版の解説

りゅうあん【硫安】

硫酸とアンモニウムが結合した代表的な窒素肥料。日本でが使用されたのは,1896年オーストラリアから副生硫安として5t輸入されたときからである。国産硫安は1901年に東京瓦斯(株)が副生物として生産を開始してからである。年間生産量は,大正初めに7000tだったのが,20年8万t前後,30年26万t,41年124万tとなったが,45年には24万tと激減した。しかし国家の援助をうけて立ち直り,50年150万t,58年260万tとなったが,以降,塩安尿素が窒素肥料として用いられ始めたことや輸出不振などで漸減している。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

硫安
りゅうあん

硫酸アンモニウムの工業上の慣用名で、セロファン、皮なめし、食品添加物などにも使われる、もっとも代表的な化学肥料である。速効性の窒素肥料で、窒素肥料の肥効は硫安を基準として評価されることが多い。日本で硫安が初めて使用されたのは1896年(明治29)にさかのぼる。国産化はその5年後で、東京瓦斯(ガス)が副産物として生産を開始したのが最初である。
 硫安は(NH4)2SO4の化学組成をもち、水によく溶ける無色透明の結晶であるが、回収副生硫安(後述)の場合には不純物のため着色していることがある。純品は窒素21.2%を含有するが、肥料用はアンモニア性窒素20.5%以上と規定されている。土壌に吸着されやすく、基肥にも追肥にも適しており、吸湿性もなく取扱いの容易な優れた肥料である。水稲、豆類、ミカン、チャ(茶)、ワタ(綿)など硫黄(いおう)を好む作物ではとくに好適な肥料である。しかし、化学的には中性であるが、副成分の硫酸の影響で土壌中の石灰、苦土の流亡を助長して土壌を酸性にする欠点があるので石灰を補給する必要があるが、硫安と石灰を直接混合するとアンモニアとして大気中に失われ、かなりの損失をおこすので、注意しなければならない。また、鉄の欠乏した老朽化水田では硫酸が土壌中で還元されて硫化水素となり、イネの根を傷め減収を招くので、施してはならない。
 硫安の種類には、原料のアンモニアと硫酸の中和反応によってつくられる合成硫安、コークスの製造や重油の直接脱硫など石炭や石油中の窒素化合物から副産物として得られる副生硫安、ナイロン原料のカプロラクタム製造など、いったんほかの用途に用いたのちさらに残存するアンモニアまたは硫酸を硫安として回収した回収硫安がある。
 現在日本で製造される硫安は、回収硫安が生産量の約80%を占めもっとも多い。1958年(昭和33)には年産260万トンに達した硫安も、尿素や塩安など他の化学肥料の生産拡大と消費の低落で、2010年(平成22)には132万トンと落ち込んでいる。[小山雄生]
『伊達昇・塩崎尚郎編著『肥料便覧』第5版(1997・農山漁村文化協会) ▽肥料協会新聞部編『肥料年鑑』各年版(肥料協会)』

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世界大百科事典内の硫安の言及

【化学工業】より

…このなかで重要なのは,1906年に開発された,空中窒素固定法の一つであるフランク=カロー法の特許実施権を08年に日本窒素肥料(現,チッソ)が購入し,翌09年水俣工場の完成で石灰窒素の生産を行ったことである。石灰窒素は施肥技術上の困難もあって肥料としての販売が思うにまかせなかったので,これを蒸気で分解してアンモニアをとり出し,このアンモニアを硫酸と化合させて硫酸アンモニウム(硫安)にして販売された。いわゆる変成硫安である。…

【窒素肥料】より

… 19世紀半ばまでは窒素肥料として用いられたのは動植物質有機質肥料だけであったが,1802年にペルーでグアノ(海鳥糞の堆積物)が発見されて肥料に利用されはじめ,また,30年ころにはチリのチリ硝石NaNO3が肥料として利用されるようになった。化学的に合成された窒素肥料としては1906年に石灰窒素がつくられ,13年にはハーバー=ボッシュ法による合成硫安製造の工業化が開始され,しだいに化学肥料が窒素肥料の主体となった。 窒素は多くの農作物で最も不足しやすい成分であるが,多すぎると作物の徒長や品質の低下を招き,ときには土を劣悪化し,また土から流亡して周辺の河川水や地下水を汚染し水質を低下させ,あるいは土からガス体のN2O,NO2,NH3などとして揮散し作物に被害を与える。…

【硫酸アンモニウム】より

…天然には,ベスビオ火山およびエトナ火山の昇華物としてマスカグニ石mascagniteが知られている。硫安の名で生産され,窒素質肥料の一種である。 無色斜方晶系の結晶。…

※「硫安」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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