翻訳|top dressing
〈おいごえ〉ともいう。元肥(基肥)に対して用いられる言葉で,作物の種まき後あるいは苗の移植後から収穫までの間のいずれかの時期に施用される肥料をいう。いわゆる集約農業によって小面積の農地で多収穫を得ようという栽培が行われている日本では追肥に関する技術は水稲栽培を中心に進んでいる。追肥がとくに必要とされるのは多収穫を目標とする場合で,作物の生育が盛んになる生育後期に,養分不足にならないように,また多収穫に適した生育をするように追肥によって調節する。耕土の浅い農地や砂質土壌の農地では肥料保持力が弱いため,元肥として施された肥料は雨水や灌漑水で流されてしまい,肥料が不足しがちとなるので追肥を適当な時期に施用する。追肥に用いられるのは主として窒素肥料であるが,カリウム肥料も肥料保持力の弱い土壌や多収穫栽培では追肥として施用される。リン酸肥料は追肥されても土壌表面に強く吸着されて動きにくくなり,作物の根に吸収されないので効果が少ないため追肥はしない。石灰や微量要素も追肥として土壌に施用しても効果が少ない。生育の途中で作物に効果的に吸収させたい場合は液体肥料として葉面散布し葉から直接吸収させる。また追肥は肥効が速やかにあらわれることと土壌内部まで浸透する必要があるので,水溶性の速効性肥料を用いる。有機質肥料など遅効性のものは用いない。追肥は土壌表面に施用するのが普通だが,深層追肥といって,作物の根の生育している土壌の下層へだんご状の肥料などを埋め込む追肥もある。
追肥の施用時期をいつにするかは大きな問題で種々研究され,施用時期によって追肥の呼称が変わる。とくに水稲ではきめ細かい追肥が実施されることがあるが,そのおもなものに次のようなものがある。(1)分げつ肥あるいはつなぎ肥 水稲やムギの分げつ開始から幼穂形成までの期間に施用する追肥で,分げつを盛んにし穂数を確保するのが目的である。とくに暖地で,元肥を少なめにした場合や漏水田などで施される。(2)穂肥 イネの追肥では最も広く実施されるもので,出穂日より25日前ころの幼穂形成期に施用される。穂に着生するもみの数の増加,分げつの確保および止葉(とめば)の生長促進と稔実の向上などの効果が期待される。(3)実肥 出穂後に施用する追肥で,多収穫イネの栽培では広く用いられるようになった。もみの稔実向上の効果がある。(4)後期追肥(晩期追肥) 生育の後期に施用する穂肥と実肥をまとめてこう呼ぶ。(5)その他 止葉の出るころ施用する止葉期追肥や穂ばらみの初期に施用する減数分裂期追肥という呼称もあり,いずれも穂肥とも考えられ,後期追肥でもある。
日本の水稲栽培では元肥と穂肥をどのような割合で施すのがよいかが問題であり,古くは元肥7~8割,穂肥2~3割という比が普通であったものが,近年の多収穫栽培では後期追肥に重点がおかれ,元肥4~5割,穂肥5~6割というような施肥法も生まれた。追肥とくに穂肥をどの程度いつ施用するかは水稲栽培の重要な問題で,元肥の量,品種および気象条件(温度と日照時間など)によって変わる。
執筆者:茅野 充男
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植物の生育途中で施される肥料のことで、追い肥、掛肥(かけごえ)ともいう。苗の移植時や播種(はしゅ)時に施される基肥に対して使われることばで、いずれも生育途中での肥料養分を補うものである。追肥されるときの植物の生育期とその目的によって、いろいろな呼び名がつけられている。分げつ肥、中間追肥などは茎肥(くきごえ)ともいい、分げつを促進し茎葉の生育をよくする目的で施されるもので、おもに窒素肥料が用いられる。穂肥(ほごえ)、実肥(みごえ)などは、生育の中・後期に穂や種実の充実のために施されるもので、窒素肥料ばかりでなく、リン酸やカリ肥料などもいっしょに施されることがある。このほか、最終の追肥のことを止肥(とめごえ)とよぶ。果樹では春肥、夏肥、秋肥など、施す時期でよんだり、また果実の収穫後に施すものを礼肥(れいごえ)というなど、基肥と追肥の関係が明確でない場合もある。追肥のやり方は植物がすでに育っている場所に施すので土の表面に散布し、土をかぶせるかめり込ませるなどの表面(層)施肥である。これら追肥の時期や回数、施肥の割合、使われる肥料の種類などは、作物の種類、土の条件、気候、生育の状態や実際の施肥試験の結果に基づいて決められている。
[小山雄生]
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…元肥(基肥)に対して用いられる言葉で,作物の種まき後あるいは苗の移植後から収穫までの間のいずれかの時期に施用される肥料をいう。いわゆる集約農業によって小面積の農地で多収穫を得ようという栽培が行われている日本では追肥に関する技術は水稲栽培を中心に進んでいる。追肥がとくに必要とされるのは多収穫を目標とする場合で,作物の生育が盛んになる生育後期に,養分不足にならないように,また多収穫に適した生育をするように追肥によって調節する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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