家庭環境(読み)かていかんきょう(英語表記)home environment

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

家庭環境
かていかんきょう
home environment

家族の生活の場である家庭を,個人を取囲む環境としてみる場合の概念。家族が個人に及ぼす教育的影響力,総体社会が家族を媒介として個人に及ぼす教育的影響力をみる場合の視角として用いられる。教育的影響力としての家庭環境には,自然的物的側面 (居住地,住居条件,家屋構造,衛生状態など) ,経済的側面 (家計状態,教育費負担能力など) ,社会的価値的側面 (社会的に期待された生活様式,家族の教育観など) ,人間関係的相互作用的側面 (父親の権威の形態,母親の言語様式,子供への期待の表現の仕方,ほめ方・叱り方など) があげられる。これらがその家族のおかれた社会経済的位置によって相異なる影響力を個人の発達,教育達成に及ぼす過程は,特に社会階層と教育の問題を扱う研究者によって研究されるようになった。

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かていかんきょう
家庭環境
family environment

家族が生活する場である家庭の環境は,通常子どもにとって発達の初期から青年期にかけての生活の中心であり,パーソナリティ形成に関して大きな影響を与える場であると考えられる。

 家族に関する研究は,かつては母子関係が中心で,それも親から子どもへの一方的な関係のみが想定されていたが,1960年代から70年代以降,新生児や乳幼児がもともともっている能力についての研究が進むにつれて,子どもの気質的特徴から親の態度や行動に及ぼす影響関係など,双方向での関係にも目が向けられるようになってきた(山崎浩一・柏木恵子,1992)。現代の研究は,家族成員個別ではなく成員全体を相互影響過程としての一つのシステムとしてとらえるアプローチへと発展してきている。

 養育者との関係が子どもに及ぼす影響としては,愛着(アタッチメント)との関係を挙げることができる。エインズワースAinsworth,M.らは,ストレンジシチュエーション法strange situation procedure(SSP)とよばれる方法により子どもの愛着パターンattachment patternを①回避型,②安定型,③抵抗・アンビバレント型,④無秩序型に分類した(Ainsworth,Blehar,M.,Waters,E., & Wall,S.,1978)。愛着パターンは,個人の人一般・対人関係一般に関する内的なイメージ(表象)として機能する内的作業モデルinternal working modelとして機能し,理論的にはその後の対人関係のスタイルにも引き継がれうると考えられている。ただし,乳幼児期の愛着スタイルが青年期まで安定したものか否かについては,その後のライフイベントや環境の影響も無視できず,必ずしも一貫した結果とはなっていない(臼井博,2008)。

 また,両親の養育態度の影響についての検討もなされている。バウムリンドBaumrind,D.(1973)は養育スタイルparenting stylesを「権威あるauthoritative」「権威主義的authoritarian」「許容的permissive」に分類し,子どもへの影響を検討した。その結果「権威ある」養育スタイルの両親の子どもは,ほかの養育スタイルに比べ,より社会性において肯定的・適応的であることが見いだされた。しかし,パークParke,R.D.とビュリエルBuriel,R.(2006)によれば,家族が所属する社会経済的地位や文化によっては権威主義的養育の方が,その環境に対して適応的な場合もあるなどのことから,養育スタイルと子どもの行動との関係は固定的に考えられるべきではないとしている。また,直接的な養育スタイルのほか,養育者自身の感情調整のあり方なども,子どもの対人スタイルや学業成績に影響を及ぼすとしている。

 両親だけでなく,兄弟・姉妹との関係も子どものパーソナリティにかかわりがあると考えられよう。しかし,兄弟・姉妹関係は,性別の組み合わせや兄弟・姉妹間の年齢差など複雑な要因が多く,研究上の難しさがある。乳幼児期においては不安定な性格と出生順位との関連が見られるものの,長子と末子の性格的違いはさほどではなく,また一人っ子の性格的な問題なども明確には見いだされていないなど,出生順位の一貫した影響が実証されたとはいいがたい(白佐俊憲,2006)。今日では,少子化や晩婚化など社会的な変化に伴い家族形態も変貌を遂げており,家族成員の構成それ自体についても異なった視点からの研究が必要となってくるであろう。 →アタッチメント理論
〔岡田 努〕

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