宿・屋戸・屋外(読み)やど

精選版 日本国語大辞典 「宿・屋戸・屋外」の意味・読み・例文・類語

や‐ど【宿・屋戸・屋外】

〘名〙 (「屋の処(と)」の意か。一説に「屋の戸」「屋の外(と)」の意とする)
① 家の戸。家の入口。戸口
万葉(8C後)四・七四四「夕さらば屋戸(やど)開け設けて吾れ待たむ夢にあひ見に来むといふ人を」
② 家の戸口のあたり。家のまわりの庭。庭さき。
※万葉(8C後)三・四六四「秋さらば見つつ偲へと妹が植ゑし屋前(やど)のなでしこ咲きにけるかも」
③ 家。すみか。家屋
※万葉(8C後)八・一六〇六「君待つと吾が恋ひをれば我が屋戸(やど)の簾動かし秋の風吹く」
④ (「やどり」との混同から) 一時的に泊まる家。旅先で泊まるところ。旅宿。転じて、宿屋。旅館。また、宿泊すること。
書紀(720)神代上(兼方本訓)「素盞嗚尊、青草(くさ)結束(ゆ)ひて、以て笠蓑(かさみの)と為(し)て、衆神(もろかむたち)に宿(ヤト)乞ふ」
⑤ 特に、自分の家。我が家。自宅。うち。
※万葉(8C後)四・七五九「いかならむ時にか妹を葎生(むぐらふ)のきたなき屋戸(やど)に入れいませてん」
⑥ 家の主人。亭主。特に、妻が自分の夫のことを他人に対していう時に用いる。
浮世草子・本朝桜陰比事(1689)三「宿を御同道なされ」
奉公人の親もと、または請人(うけにん)
※雑俳・末摘花(1776‐1801)初「ずはらんで居ますとにぢる下女が宿」
⑧ 実家。さと。
※落語・芝居と帯(1898)〈六代目桂文治〉「実家(ヤド)へまゐって母と相談をして来ませうか」
⑨ ある目的をもって人が寄り集まり、出入りする家屋。また、賭博、逢引き、売春などある種の行為が営まれるのに提供される家。中宿、小宿などの類。
歌舞伎与話情浮名横櫛(切られ与三)(1853)四幕「隠し売女や勝負ごとの宿をしたといふではなし」
揚屋。また、置屋
※浮世草子・好色一代男(1682)七「『今日は尾張のお客へも世之介殿へも売ぬ』とて高橋たぶさをとって宿(ヤド)にかへる」
車屋が雇って抱えておく車引き。ひきこ。
日本下層社会(1899)〈横山源之助〉一「やどとは一名部屋住み車夫と呼ばるる者」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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