宿泊税(読み)しゅくはくぜい(英語表記)accommodation tax

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宿泊税」の意味・わかりやすい解説

宿泊税
しゅくはくぜい
accommodation tax
room tax
hotel tax

ホテルや旅館に泊まった人から徴収する税金地方税法に定められた税目ではなく、地方自治体が条例で独自に徴収する法定外目的税である。導入には、税収使途を限定して税率を定め、総務大臣の同意を得る必要がある。東京都が2002年(平成14)10月に導入したのを皮切りに、大阪府、福岡県、京都市、金沢市、福岡市、北九州市、長崎市、北海道倶知安(くっちゃん)町が導入。新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行が収束したことで、北海道、沖縄県、札幌市、北海道小樽(おたる)市、同ニセコ町、愛知県常滑(とこなめ)市、松江市、沖縄県北谷(ちゃたん)町など多くの自治体が導入を検討し、全国知事会は法定化による全国一律の課税も選択肢の一つとしている。税額は京都市が200円(1泊2万円未満)、500円(1泊2万円以上5万円未満)、1000円(1泊5万円以上)に設定するなど、宿泊代に応じ、宿泊代の1~3%程度に相当する税額を複数設定するのが一般的である。税収は多言語の案内施設の整備やトイレの洋式化などの外国人観光客対策のほか、観光振興、伝統・文化の振興、環境保全、違法民泊の調査・通報などに使われる。インバウンド増による観光振興費の増大にあわせ、税率引上げを検討する自治体もある。京都市が修学旅行生の宿泊を課税対象外とし、東京都が2020年(令和2)のオリンピック・パラリンピック東京大会(2021年実施)期間中は非課税としたなど、自治体の裁量で制度運用される特徴がある。課税対象もホテルや旅館のほか、簡易宿所や民泊施設を含める自治体もある。

 海外ではアメリカのカリフォルニア州ハワイ州、イタリアのローマミラノなどの都市、カナダのブリティッシュ・コロンビア州、アルバータ州などが導入しており、滞在税lodging tax、客室税room tax、ホテル税hotel taxなどとよばれることもある。日本では、1940年(昭和15)に宿泊料金に課税する遊興飲食税(その後、料理飲食等消費税、特別地方消費税)が導入されたが、消費税との二重課税になるとして2000年にいったん廃止された。その後、東京都が法定外目的税として導入し、外国人観光客の増加にあわせて全国に広がっている。

[矢野 武 2024年2月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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