寄席で用いられる囃子のこと。出囃子と地囃子がある。出囃子は落語家や漫才師などが登場するときに用いられるもので,個人の好みによって特定の曲があり,またその芸格によって曲が変わることもある。長唄,浄瑠璃,小唄,俗曲,民謡など,用いられる曲は多岐にわたる。初めは上方で行われていたが,大正時代に東京に移入された。地囃子は奇術師や曲芸師の演芸中に奏するもので,上方落語では,はなしの背景に囃子や歌を伴奏として入れ,情景描写や心理描写に用いるが,これを〈はめもの〉ともいう。鳴物は歌舞伎の下座(げざ)音楽にならっており,太鼓や鉦(かね)を打つのは落語家の前座で,三味線と歌は通常芸達者な年輩の婦人が担当する。このほか,楽屋の用意ができたことを知らせる〈二番〉があり,笛と太鼓でにぎやかに囃す。
→囃子
執筆者:長尾 一雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…囃子という呼称は,現今は狭義の意味で用いられることが多い。下座音楽【景山 正隆】
[寄席]
寄席囃子は,(1)興行の習俗にかかわる囃子,(2)出囃子,(3)受け囃子,(4)はめ物,(5)色物の囃子,の5種に分けることができる。(1)は寄席の日々の行事として奏されるもので,開場時の〈一番太鼓〉,演者がすでに楽屋入りをしたことを知らせる〈二番太鼓〉(着到),終演時の〈打出し〉など,ほぼ歌舞伎の劇場の習俗に準じる。…
※「寄席囃子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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