出囃子(読み)デバヤシ

デジタル大辞泉 「出囃子」の意味・読み・例文・類語

で‐ばやし【出×囃子】

長唄で、唄方三味線弾きとが舞台に出て、観客に姿を見せて演奏すること。歌舞伎舞踊などで行われる。
1うち特に、囃子方も舞台上に出て演奏すること。
寄席で、芸人高座へ上がるときに演奏する囃子

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精選版 日本国語大辞典 「出囃子」の意味・読み・例文・類語

で‐ばやし【出囃子】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 歌舞伎所作事で、長唄連中の出唄いの時、囃子(はやし)方がともに舞台雛壇に並んで演奏すること。また、その囃子。
    1. [初出の実例]「所作 長唄三味線出ばやしなり」(出典:御狂言楽屋本説(1858)初)
  3. 寄席芸人が高座に上がる時に演奏する下座の囃子。
    1. [初出の実例]「芸人の上るとき、下りるときには、出囃子が入る」(出典:寄席風俗‐上方落語・芝居噺研究(1942)〈正岡容〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「出囃子」の意味・わかりやすい解説

出囃子 (でばやし)

(1)寄席用語。落語家をはじめとする寄席の芸人が,高座の上がり,下(お)りの際に用いるはやし(囃子)をいう。元来は上方落語界の風習で,上方では,前座,二ッ目,真打と,おのおのの地位に応じて出囃子の種類がきまっているが,東京では,それぞれ勝手な囃子を用いている。東京落語界で出囃子をもちいるようになったのは大正初期からで,東西の芸人の交流がさかんになったことによる。東京では,お囃子さんが落語家の体つき芸風持味などを観察し,その個性にふさわしい曲を選ぶのがしきたりである。
執筆者:(2)邦楽・舞踊用語。歌舞伎舞踊や日本舞踊で,長唄の唄,三味線,鳴物が舞台に出て地の音楽(伴奏音楽)を演奏する形式を言う。なお浄瑠璃では太夫と三味線が舞台に出て語ることを〈出語り(でがたり)〉と呼んでいる。
囃子
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「出囃子」の意味・わかりやすい解説

出囃子
でばやし

歌舞伎および邦楽の演奏用語。歌舞伎や日本舞踊において,伴奏の長唄の唄方,三味線方,囃子方が舞台に並んで演奏すること。舞台に置いた雛段の上段に唄と三味線がすわり,下段に笛,小鼓,大鼓,太鼓が並ぶ。囃子方は最低4人であり,上段の人数によって人員をふやし舞台をにぎやかにする。これに対し,常磐津清元などの浄瑠璃が舞台に出て伴奏するのを「出語り」という。この場合は舞台の上手または下手に山台を据える。歌舞伎において最初舞台に出ていたのは唄と三味線であったが,寛政 (1789~1801) 頃から今日のように囃子方も舞台に出て並ぶようになり,衣服も統一されるようになった。なお,これに対して黒御簾 (くろみす) のなかで演奏される下座 (げざ) の音楽を「陰囃子」あるいは「黒御簾音楽」という。

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知恵蔵 「出囃子」の解説

出囃子(でばやし)

演者のテーマ音楽。高座への出に使われ、二つ目以上に許される。落語通はこれを聞いただけで誰かを知る。もとは京・大坂の寄席の習わしで、大正末期に東京に持ち込まれた。歌舞伎の下座(げざ)音楽や清元、新内、長唄の節から流用したものが多い。桂春団治、桂文楽の「野崎」、古今亭志ん生「一丁入り」、三遊亭圓生「正札付き」、柳家小さん「序の舞」、古今亭志ん朝「老松(おいまつ)」などは特に有名。現役では柳家小三治「二上がり鞨鼓(かつこ)」、三遊亭円楽「元禄花見踊」、立川談志「木賊(とくさ)刈」。前座の出囃子は東京が「越後獅子」、大阪が「石段」に統一。

(太田博 演劇・演芸評論家 / 2007年)

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とっさの日本語便利帳 「出囃子」の解説

出囃子

演者を高座に導くための背景音楽。伝統音楽などから演者が自分で選ぶ。

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世界大百科事典(旧版)内の出囃子の言及

【歌舞伎】より

…歌舞伎は,舞楽,能,狂言,人形浄瑠璃などとともに日本の代表的な古典演劇であり,人形浄瑠璃と同じく江戸時代に庶民の芸能として誕生し,育てられて,現代もなお興行素材としての価値を持っている。明治以後,江戸時代に作られた作品は古典となり,演技・演出が〈型(かた)〉として固定したものも多いが,一方に新しい様式を生み出し,その様式にもとづいた作品群を作りつづけてきた。また,古典化した作品の上演にも新演出を試みるなどの方法によって,全体としては流動しながら現代に伝承され,創造がくり返されている。…

【出語り】より

…浄瑠璃用語。浄瑠璃の太夫と三味線が見物に姿を見せて演奏すること。初期の人形浄瑠璃では太夫と三味線は幕の陰で語っていたが,1705年(宝永2)大坂竹本座の《用明天王職人鑑》から出語り出遣いが始まったといわれる。現在の文楽では,ごく短い端場を除いて出語りが主となっており,演奏者は舞台上手(右)にしつらえた床(ゆか)に座し,肩衣を着用する。出語りでない場合は床の上部の御簾(みす)の陰で語るので〈御簾内(みすうち)〉と呼ぶ。…

【囃子】より

…日本音楽の用語。映えるようにする,ひきたてるという意味の〈はやす〉から出た語で,独唱,中心となる音楽や演技に添える楽器主体の演奏,またはその演奏者をいう。民俗芸能,能,狂言,歌舞伎,寄席など,それぞれに特徴のある〈囃子〉がある。
[民俗芸能]
 囃子は狭義には楽器主体の演奏をいうが,民俗芸能では,祭場で神の来臨を乞い,土地・人の繁栄を祝う文句を太鼓をたたきながら唱和することを〈しきばやし〉〈うちはやし〉(愛知県北設楽(きたしたら)郡の花祭)などと呼ぶ例があり,ことばや楽器の力で,神霊を発動させ,ものの生命力の強化・伸張をはかろうとする呪的意図があったとみられる。…

【寄席囃子】より

…寄席で用いられる囃子のこと。出囃子と地囃子がある。出囃子は落語家や漫才師などが登場するときに用いられるもので,個人の好みによって特定の曲があり,またその芸格によって曲が変わることもある。長唄,浄瑠璃,小唄,俗曲,民謡など,用いられる曲は多岐にわたる。初めは上方で行われていたが,大正時代に東京に移入された。地囃子は奇術師や曲芸師の演芸中に奏するもので,上方落語では,はなしの背景に囃子や歌を伴奏として入れ,情景描写や心理描写に用いるが,これを〈はめもの〉ともいう。…

※「出囃子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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