日本大百科全書(ニッポニカ) 「射創」の意味・わかりやすい解説
射創
しゃそう
gunshot wound
拳銃(けんじゅう)、散弾銃、小銃などの軽火器や空気銃の弾丸、または砲弾や爆弾の破片などによる創傷(そうしょう)をいい、古くは銃創といった。弾丸の射入点を射入創(しゃにゅうそう)、射出点を射出創(しゃしゅつそう)という。弾丸または弾片が身体を貫いて体外に出たものを貫通創(かんつうそう)といい、体内にとどまり射出創のないものを盲貫創(もうかんそう)という。表面を接線状に擦り通った射創を擦過射創(さっかしゃそう)、弾丸の力が弱く皮膚に当たって跳ね返ったものを反跳射創(はんちょうしゃそう)という。一般に射入創は小さく辺縁が整っているが、射出創は皮膚が裂けて大きい。また、射入口では衣服の切片、塵埃(じんあい)などが圧入されていることがあり、近距離射撃では射入口の皮膚に火傷と火薬の爆粉の付着がみられる。臓器組織の損傷は射入創と射出創を連ねた線上におこり、深部の重要臓器が容易に損傷される。弾丸の熱作用や弾丸とともに侵入した空気や飛散した組織片の作用などによって、弾丸の大きさよりもはるかに大きな範囲の複雑な組織損傷を形成し、また、直接に接触していない部位の骨折や、消化管などの臓器破裂をきたすことがある。心臓、大血管の損傷や脳損傷では瞬時に死亡することが多い。肺損傷、肝臓、腎臓(じんぞう)、脾臓(ひぞう)、消化管の損傷なども重大な外傷であり、生命の危険が高い。猟に用いられる散弾銃の殺傷力はあまり強くなく、通常の射程では皮下にとどまることが多いが、近距離射撃ではやはり生命の危険がある。反跳射創では皮下の挫傷(ざしょう)や骨折を生ずることがある。銃弾による射創は原則として無菌的創傷として処理し、弾丸が残留しても多くは無反応に治癒する。組織内にとどまった留弾によって神経、腱(けん)、関節などに疼痛(とうつう)、麻痺(まひ)、機能障害を残す場合は、摘出する。
日本では危害予防上定められた銃砲刀剣類所持等取締法によって銃砲の所持が制限されているため、射創の発生は多くないが、毎年70~120件の銃砲による事件と、50~70件の事故が発生している(1997~2007)。事件は拳銃、事故は散弾銃によるものが多い。
[荒木京二郎]