小劇場演劇(読み)しょうげきじょうえんげき

百科事典マイペディア 「小劇場演劇」の意味・わかりやすい解説

小劇場演劇【しょうげきじょうえんげき】

1960年代半ば以降盛んになった日本の演劇運動。通常の劇場よりも,小劇場や屋外テントを張った空間などを主に使用したことからこの名がある。また一般的には,アンダーグラウンド地下)演劇を略した〈アングラ演劇〉という呼称も使われた。海外の新しい演劇や同時代の社会状況と同調しながら,演劇表現の変革を目指して多様な実験が繰り広げられた。代表的な劇団唐十郎の状況劇場,鈴木忠志別役実らの早稲田小劇場,寺山修司天井桟敷,佐藤信・串田和美らの自由劇場などがある。1970年代に入って,つかこうへい野田秀樹らが登場し,小劇場演劇は幅広い観客層に受け入れられるようになったが,1980年代には拡散していった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小劇場演劇」の意味・わかりやすい解説

小劇場演劇
しょうげきじょうえんげき

小規模の劇場を拠点に,既成の演劇に対抗して行われる演劇運動。近代における演劇改革運動はおおむね小劇場に端を発しており,19世紀末のフランスの A.アントアーヌの小劇場,ロシアの K.スタニスラフスキーのモスクワ芸術座,小山内薫らの築地小劇場などがその先駆的存在。 1960年代から展開されたアングラ演劇オフ・ブロードウェーオフ・オフ・ブロードウェーの演劇も小劇場運動の一つといえる。しかし今日では,世界的に改革運動としての本来の性格が失われ,単に新進の劇団やグループによる演劇活動をさす傾向が強まっている。

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知恵蔵 「小劇場演劇」の解説

小劇場演劇

小劇場の空間で上演される演劇。商業主義の演劇に対し、演劇の先鋭なかたちを求める演劇人によって作られることが多い。19世紀末から20世紀初めにかけてフランス、英国、ドイツ、北欧など欧州で起こった近代劇の運動の多くは、小劇場演劇スタイルをとった。特に1960年代には、ニューヨークのオフ・オフ・ブロードウェーの前衛劇など、世界的な規模で小劇場での演劇活動が活発化。日本でも、60年代中頃以降、定員300人以下の小劇場を拠点に新劇商業演劇など、既成の演劇の枠を超えた現代演劇を作ろうとする動きが盛んになり、アングラ演劇(アンダーグラウンド演劇の略)とも呼ばれた。創始者は唐十郎、寺山修司、鈴木忠志、佐藤信、太田省吾ら。

(扇田昭彦 演劇評論家 / 2007年)

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