日本大百科全書(ニッポニカ) 「野田秀樹」の意味・わかりやすい解説
野田秀樹
のだひでき
(1955― )
劇作家、演出家、俳優。長崎県生まれ。東京大学法学部中退。在学中の1976年(昭和51)に劇団夢の遊眠社を結成、自作の『咲かぬ咲かんの桜吹雪は咲き行くほどに咲き立ちて明け暮れないの物語』で旗揚げした。以来、81年の『ゼンダ城の虜(とりこ)』まで東大教養学部内の駒場小劇場を拠点にしていた。このころから野田と劇団の人気が高まり、同年に新宿の紀伊國屋(きのくにや)ホールに進出して『少年狩り』を再演(初演は1979年)したころから急激に観客数が増加して、若手劇団の牽引(けんいん)車的な存在になった。83年に『野獣降臨(のけものきたりて)』で岸田戯曲賞を受賞。野田と夢の遊眠社は社会的にも注目された。ことば遊びで現実と夢をスピーディーに交錯させ、その果てに独自の叙情を浮上させるのがその戯曲の特色。人気絶頂の92年(平成4)に劇団を解散し、翌年文化庁の芸術家在外研修員としてロンドンに留学、93年に演劇制作会社NODA・MAPを設立して、帰国後の94年の『キル』で演劇活動を再開した。
[大笹吉雄]
『『定本・野田秀樹と夢の遊眠社』(1993・河出書房新社)』