日本大百科全書(ニッポニカ) 「小説月報」の意味・わかりやすい解説
小説月報
しょうせつげっぽう
中国近代の月刊文芸誌。商務印書館発行。1910年創刊以後、主編惲樹珏、王蘊章で、文語による戯作(げさく)風の「鴛鴦蝴蝶派(えんおうこちょうは)」の雑誌であったが、21年1月、おりから発足した文学研究会の準機関誌に改組、内容を一新した。初期に掲載されたおもな作品に、謝冰心(しゃひょうしん/シエピンシン)『超人』、葉紹鈞(ようしょうきん/イエシャオジュン)『隔膜』、許地山(きょちさん/シュイディシャン)『命命鳥』『巣をつくる蜘蛛(くも)』などがあり、民衆の生活への強い関心を共通の特色とするといえる。主編は23年以降鄭振鐸(ていしんたく/チョンチェントゥオ)(1927~29年の鄭の渡欧中は葉紹鈞)に変わったが、その後も代表的文学雑誌として20年代の中国文学に大きな位置を占めた。20年代後半には老舎(ろうしゃ/ラオショー)『張さんの哲学』、巴金(はきん/パーチン)『滅亡』、丁玲(ていれい/ティンリン)『莎菲(シャーフェイ)女士の日記』なども発表され、これらの作家を文壇に送り出す役割も果たした。32年1月、上海(シャンハイ)事変で商務印書館が被爆したため停刊した。
[白水紀子]