尿細管性アシドーシス(読み)にょうさいかんせいアシドーシス(その他表記)Renal tubular acidosis (RTA)

六訂版 家庭医学大全科 「尿細管性アシドーシス」の解説

尿細管性アシドーシス
にょうさいかんせいアシドーシス
Renal tubular acidosis (RTA)
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か

 腎臓は、体液の酸度(ペーハー:㏗)を一定に保つために重要な臓器です。腎臓の糸球体(しきゅうたい)で、血液から濾過された尿(原尿)が通過する尿細管では、酸を中和する「重炭酸(じゅうたんさん)」を作ったり、酸である「水素イオン」を尿へ排泄します。「アシドーシス」とは体液が酸性に傾いた状態を示しますが、尿細管性アシドーシスとは、この尿細管のはたらきが障害された病気で、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅳ型の3つに分類されます(表21)。

●Ⅰ型 尿に水素イオンを排泄できないタイプです。血液中のカリウム(K)と重炭酸が低下し、腎臓の石灰沈着尿路結石を合併することがあります。

●Ⅱ型 重炭酸を作るはたらきが低下したタイプです。血液中のカリウムが低下し、ファンコニ症候群ブドウ糖やリン酸などが尿中にもれる病気)や骨粗鬆症(こつそそうしょう)を合併することがあります。

●Ⅳ型 腎臓でカリウムを調節するホルモンのはたらきに異常がみられることが多く、そのため血液中のカリウムが上昇するのが特徴です。

原因は何か

 原因は多岐にわたりますが、遺伝性のもの、全身疾患に伴うもの、薬物の副作用に伴うもの、ホルモンの異常に伴うものが多いようです(表22)。

症状の現われ方

 軽症例は無症状ですが、進行すると意識障害、頭痛、過換気(かかんき)()き気、嘔吐(おうと)、成長障害を起こしたりします。また、尿の濃縮障害による多尿、脱水、カリウムなどの電解質異常による筋力低下、けいれん麻痺(まひ)、知覚障害、不整脈などが出現します。

検査と診断

 血液ガス分析と、血清電解質、尿の㏗を測定し、鑑別診断と病型の分類を行います(表21)。また、画像診断を用いて、腎臓の石灰沈着、尿路結石、骨粗鬆症についても調べます。

治療の方法

 Ⅰ型とⅡ型では、重曹もしくはクエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム合剤(ウラリットU)の投与によるアシドーシスの補正と、食事やカリウム製剤投与による低カリウム血症の補正を行います。

 Ⅳ型では、食事や飲み物のカリウム制限を行い、イオン交換樹脂を投与します。効果が乏しい場合はフルオロコルチゾン(フロリネフ)が投与されます。

病気に気づいたらどうする

 病態が複雑で病型により治療法が異なりますので、自己判断は禁物です。専門医を受診し、適切な治療を受けましょう。

大澤 勲


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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