家庭医学館 「尿道損傷」の解説
にょうどうそんしょう【尿道損傷 Urethral Injury】
骨盤骨折(こつばんこっせつ)にともなっておこる後部尿道(体内)損傷と、転落などして、かたいものをまたぐようにして股間(こかん)(会陰部(えいんぶ))を強打した際の前部尿道損傷に分けられます。
尿道の解剖学的位置、長さなどから、男性に多くみられる損傷です。
[症状]
尿道からの出血、排尿困難がおもな症状です。骨盤骨折にともなって尿道が断裂(完全断裂)してしまうと、尿がまったく出ない尿閉(にょうへい)という状態になります。
また、会陰部の打撲(だぼく)による尿道損傷では、会陰部から陰嚢(いんのう)にかけての広い範囲にわたって皮下血腫(ひかけっしゅ)(皮膚の下にできた内出血による血のかたまり)がみられます。
[検査と診断]
単純X線撮影で骨盤骨折の有無を確認してから、尿道に造影剤を注入してX線撮影し、損傷部位と程度を確かめます。
[治療]
軽い損傷なら、安静と抗生物質の服用だけでようすをみることもありますが、多くの場合、尿道にカテーテルを2~3週間入れたまま導尿して、尿道を保護します。
損傷の程度がひどい場合は、カテーテルが挿入できないので、当初は体外に尿を導くため膀胱瘻(ぼうこうろう)をつくり、時期を待って尿道の再建手術が行なわれます。また、治癒(ちゆ)した尿道の傷が盛り上がったりして尿道狭窄(にょうどうきょうさく)がおこりやすく、その場合は尿道拡張が必要になります。