層状貫入岩体(読み)そうじょうかんにゅうがんたい(英語表記)layered intrusion

改訂新版 世界大百科事典 「層状貫入岩体」の意味・わかりやすい解説

層状貫入岩体 (そうじょうかんにゅうがんたい)
layered intrusion

貫入火成岩体のなかには,それがかつて地下にあったときに,その中でマグマ結晶分化作用が起こったことがはっきりと観察できるものがある。そのため,貫入火成岩体の詳細な研究は,火成岩岩石学の進歩に大きな貢献をしてきた。大規模で,厚さ数kmにも達する貫入火成岩体では,マグマの冷却はゆるやかに進み,結晶の沈降によって,著しい分化が見られるようになる。岩体には明暗の縞状構造がよく発達する。これはマグマから晶出した結晶が底に集積してできるもので,リズミック・レーアリングrhythmic layering(周期的成層構造)と呼ばれ,このようなレーアリングの発達した貫入火成岩体を層状貫入岩体という。岩体の下部に集積した結晶を集積鉱物cumulus mineralと呼び,集積鉱物間隙を満たしている液体を間隙液intercumulus liquidという。間隙液は,結局は,それと接する鉱物と反応しながら結晶化する。こうして,結晶の集積によってできる岩石を集積岩cumulateと呼ぶ。層状貫入岩体は,安定大陸地域に特徴的に産出し,大きなロポリスないし成層貫入岩体stratiform intrusionのほか小型の漏斗状貫入岩体funnel-shaped intrusionがある。一般に,岩体下部には早期結晶集積による超マフィック岩があり,上部へ向かって一般にトロクトライト,ノーライト,斑レイ岩の順に重なり,相互の関係は漸移的である。有名な例として,スケアガート貫入岩体ブッシュフェルト貫入岩体グレートダイク,スティルウォーター複合岩体などがある。母マグマはスケアガート岩体の急冷周縁相で示されるように,ソレアイト質マグマである。岩体の大きさはいろいろあり,大型のブッシュフェルト貫入岩体の分布面積は6万7000km2,小型のスケアガート貫入岩体のそれは60km2である。岩体の厚さは3~8kmである。超マフィック岩の占める割合は一般に小さく,ブッシュフェルトで7分の1である。
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岩石学辞典 「層状貫入岩体」の解説

層状貫入岩体

縞状または層状の性質をもつ火成岩貫入体[Wager : 1953].一般に結晶分化作用は普通の火山活動では直接観察することができないが,厚いシル(sill)状の貫入岩などでは上下方向に組成が漸移する場合があり,マグマ溜まりの中の冷却過程で結晶分化作用が起こったと推定されているものがある.このような層状貫入分化岩体の例には,パリセード(Pali-sade)輝緑岩シル,スカエルガード(Skaergaard)貫入岩体,ブッシュフェルド(Bushveld)複合岩体,スチルウオーター(Stillwater)複合岩体,ションキンサグ(Shonkin Sag)・ラコリスなどがよく知られている.これの貫入岩体はいずれも大規模なもので,大規模岩体であるために内部の結晶分化作用が分かるのか,大規模であるために内部で結晶分化作用が起こるのか,どちらであるかは分からない.大規模岩体で得られた推論を一般的な分化作用として小規模岩体に当てはめて考えるのが普通であるが,実際には結晶分化作用が分からない小規模な岩体が多く,この違いが単に規模の差によるのか,あるいは規模の差による本質的に異なった結晶作用が行われたのかは検討の必要がある[鈴木 : 1994].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

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