巨人説話(読み)きょじんせつわ(その他表記)giant legend

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「巨人説話」の意味・わかりやすい解説

巨人説話
きょじんせつわ
giant legend

並みはずれて大きな人間の存在,生活,行動などを物語る説話で,巨人伝説ともいう。世界各地の各民族の間に伝えられるが,類別すれば次のように大別できる。 (1) 宇宙の起源に関係するもの たとえばインドのベーダ神話で物語られるプルシャは,その五体から天界,空界,大地,太陽,月などが生じたとする。北欧神話のイミル,中国神話の盤古などもこれに属する。 (2) 山や湖など,自然環境の生成を説明するもの 日本の巨人説話に最も普遍的なもので,たとえば群馬県高崎市の赤沼は赤城山に腰掛けたダイダラボッチが立とうとして力んだときの足跡であると説く (→大太法師 ) 。『常陸国風土記』の大人 (おおひと) や阿蘇の鬼八法師,鹿児島の大人弥五郎など例が多い。 (3) 強い自然力,自然現象の象徴化 ギリシア神話ティタンギガンテス,北欧神話の霜の巨人族など。 (4) 風説の誤信などによる異形化 古代の諸民族にとって,自分たちの住んでいる世界の外は未知の世界であったため,そこに異形族の存在を想定した。 (5) 実在した異民族の身長を誇大に伝えたもの。 (6) 被征服民族の恐怖心が征服民族を巨人化したもの。 (7) 文芸的興味に基づく想像力によるもの 高山がみな水底に没したノア洪水で,わずかにかかとを濡らしたにすぎないとされるヘブライ神話のオグや,天地の間にいつも背を曲げていなければならなかったとされる『播磨国風土記』の大人などがこの例である。

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