日本大百科全書(ニッポニカ) 「干しぶどう」の意味・わかりやすい解説
干しぶどう
ほしぶどう
ブドウの実を乾燥したもの。レーズンraisinともいう。レーズン製造の歴史はたいへん古く、古代の中近東でつくられていた。紀元前にはアルメニア王国で、その後小アジアでおもにつくられ、13世紀のころにはスペインとハンガリーがレーズン市場を支配した。18世紀以降カリフォルニアが世界最大の生産地となり、オーストラリア、ヨーロッパ(ギリシア、スペイン)、中国でもつくられている。製法は天日乾燥と人工乾燥とがある。ブドウの品種としては種なしのトムソンシードレス、ブラックコリンズやサルタナがよく知られている。また、種子を抜いたマスカット類を用いたものもある。日本で市場に出回っているものはほとんどが輸入品である。原料ブドウの品種や生産地で酸味・甘味に差がある。色の淡い干しぶどうでは小粒のサルタナがよく出回っている。
干しぶどうは炭水化物が約80%を占め、高エネルギー食品である。しかも保存性がよく、軽いので、登山などの携帯食に適している。ミネラルではカリウム、鉄が多い。用途は、そのまま食用とするほか、ケーキ、クッキー、パイ、パンなどの副材料にする。また、肉料理、ピラフ、サラダなど料理にも用いる。さっと湯を通してほこり臭や汚れをとり、ブランデーやラム酒に漬けて用いると風味がよい。
[河野友美・大滝 緑]