日本大百科全書(ニッポニカ) 「乾燥果実」の意味・わかりやすい解説
乾燥果実
かんそうかじつ
果実を、日光、温風、あるいは凍結により乾燥した加工食品。ドライフルーツともいう。人間は古代から果実を食用としていたので、腐敗しやすい果実を保存のために日光で乾かしていたと考えられる。なかでも干しいちじくは古い歴史をもち、1000年余り前すでに大産業となっており、地中海沿岸はもちろん、ヨーロッパにも市場をもっていた。
日本では、乾燥果実の代表として干し柿(がき)があげられるが、ほかにはたいしたものはなく、わずかにナシ、モモ、ビワ、リンゴ、アンズ、イチジクなどが乾燥加工されているにすぎない。しかし、海外での乾燥果実の利用度は大きく、ブドウ、バナナ、サクランボ、コケモモ、ネクタリン、キイチゴ類、スモモ、ナツメ、パパイヤ、パイナップルなど多くの果実が用いられている。
加工・用途
乾燥果実は乾燥中の褐変(かっぺん)防止のため、漂白作用のある食品添加物の二酸化硫黄(いおう)で処理したり、果皮に蝋質(ろうしつ)の多いものではアルカリ液処理をしたあと乾燥することもある。乾燥果実に加工する果実原料は、一般に貯蔵中の変化があるので、完熟よりすこし前のものが用いられることが多い。しかし、干しぶどうや干しいちじくでは、なるべく枝に長くつけておき、やや過熟になったもののほうが糖分含量が高くなるのでよい。果実は、熱処理などせず、そのまま、または皮をむいた状態で乾燥するので、果実の中に含まれている酵素が働き、乾燥果実独特の味や香りが出る。したがって、菓子や加工食品に加えるとか、料理に用いる際、なまの果実とは異なる風味を味わうことができる。乾燥果実は水分が少なく、味もそれだけ濃縮されたものになる。とくに糖分が濃縮されるので、甘味が強くなり、また、糖分の保水性により、しっとりした状態が保たれるうえ、糖分の酸化防止作用のため、長期間保存しても風味の変化が少ない利点がある。なお、乾燥後、植物油をからめたものや、加糖して甘味を強調したものなどもある。
[河野友美・大滝 緑]