年金受給開始年齢(読み)ねんきんじゅきゅうかいしねんれい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「年金受給開始年齢」の意味・わかりやすい解説

年金受給開始年齢
ねんきんじゅきゅうかいしねんれい

年金保険制度において、年金受給できるようになる年齢。日本の公的年金保険制度には、(1)日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入を義務づけられ、基礎年金になるとともに、自営業者などに対する年金を支給する国民年金、(2)厚生年金保険の適用を受ける企業に勤務するすべての人が入る厚生年金、(3)公務員と私立学校職員などが入る共済年金の三つがある。

 国民年金の受給開始年齢は制度発足当初から65歳である。厚生年金と共済年金の受給開始年齢は、戦後の発足時には男女ともに55歳であった。その後、日本社会の高齢化や高齢者雇用の広がりにあわせて順次、法改正が行われ、受給開始年齢が引き上げられてきた。1985年(昭和60)の年金制度改正では、厚生年金の受給を原則65歳からとしたが、当時65歳までの高齢者を雇用する企業がほとんどなく、60歳から64歳まで「特別支給の厚生年金」を支給することで、事実上、厚生年金の受給年齢を60歳とした。さらに2000年(平成12)の年金制度改正では、男性の厚生年金の受給開始年齢は、加入期間に比例して決まる定額部分(基礎年金に該当)について、2001年度から3年に1歳ずつ引き上げ、2013年度から65歳とした。厚生年金のうち、年金額が加入期間中の給与報酬)などに比例する報酬比例部分についても、2013年度から3年に1歳ずつ段階的に引き上げて2025年度に65歳とする。女性については、過去に男女別定年制を採用していた企業が存在したことに配慮し、男性よりも5年遅れのスケジュールとなっている。つまり定額部分は2006年度から2018年度にかけて段階的に65歳に上げ、報酬比例部分は2018年度から2030年度にかけて段階的に65歳に上げる。共済年金の受給開始年齢も厚生年金と同様に引き上げる。

 なお厚生年金の受給開始年齢引き上げにあわせ、2013年4月から、65歳まで希望者全員を雇用するよう企業に義務づける改正高年齢者雇用安定法が施行された(65歳までの雇用義務化)。また国民年金(基礎年金)の受給は原則65歳であるが、本人の希望により60~64歳に前倒しして受給する繰上げ受給と、66歳以降に遅らせる繰下げ受給の制度がある。繰上げの場合、年金額が一定の率で減額され、繰下げの場合は一定の率で増額される。その増減率は一生涯続く。

 海外でも、先進国では高齢化の進展にあわせ、多くの国々で年金受給開始年齢を引き上げる制度改正が実施されている。アメリカは2013年時点で66歳の年金受給開始年齢を2027年までに67歳に引き上げ、イギリスも2024年から2046年にかけて、65歳から68歳に引き上げる。ドイツは2012年から2029年にかけて、65歳から67歳への引き上げを実施していく。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例