定年制(読み)ていねんせい(英語表記)age-limit system

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

定年制
ていねんせい
age-limit system

一定の年齢に達した労働者を労働協約就業規則によって自動的に退させる制度停年制とも書く。日本では終身雇用制度と年功序列賃金体系が確立され始めた大正年間に導入された。退職者には功労に謝意を示し,老後の生活を保障するといった名目の退職金が支払われる。定年退職する日は企業ごとの規定に基づき,定年年齢に達した誕生日,定年年齢最後の日などになる。 2004年の厚生労働省『雇用管理調査』によると,定年制を定めている企業は 91.5%に達し,定年年齢を 60歳とする企業の割合は 90.5%を占めた。定年退職者が抱える経済的・社会的問題への対策として,国は高年齢者雇用安定法の改正による 65歳までの定年延長,継続雇用制度の拡充,シルバー人材センターや高齢者能力開発情報センターといった機関による就業機会の提供など,定年退職後も引き続き働くことができる環境整備をはかった。また,仕事以外での社会参加を促進するために,高齢者社会参加促進総合事業として地域活動指導者やボランティア養成の施策を打ち出した。ヨーロッパ諸国や中国,大韓民国 (韓国) にも,日本の定年制やそれに準じた制度は存在するが,雇用における年齢差別をなくす目的のために廃止される傾向が強い。

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百科事典マイペディアの解説

定年制【ていねんせい】

かつては停年制とも書かれた。一定年齢に達した労働者を退職させる制度。日本の民間企業では相対的に高賃金となった高年労働者を,永年勤続的雇用から排除するために広く採用されている。1998年4月から高年齢者雇用安定法によって,60歳定年が義務化された。しかし,労働力供給構造の変化を背景にした年金支給年齢の引上げ(2001年から61歳に,2013年からは65歳に)などのため再検討が要請されている。また企業側には,早期退職優遇・転職援助制度,出向や転籍などの動きもみられ,定年前離職も増えつつある。公務員については裁判官・国立大学教員・自衛官などに例外的に定められている。→60歳定年法

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ビジネス用語集の解説

定年制

企業の従業員が一定の年齢に達したことを理由として
退職、雇用契約を終了させること、その制度についてをいいます。

定年制を導入する場合には必ず就業規則に定める必要があります。
また60歳未満の定年制は法律によって設けることはできません。

海外では定年制自体を廃止または禁止とする動きも多く見受けられ、
国内においても少子高齢化が進んでいる状況から、
定年とする年齢の引き上げや定年制の廃止が検討される可能性も高くなっている。

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世界大百科事典 第2版の解説

ていねんせい【定年制】

労働者が定められたある年齢に到達すると,その年齢になったことのみを理由に,その者の労働能力と意思とは無関係に,企業との労働契約がなくなる制度をいう。かつては停年制と書くことも行われたが,実態は定年制と同じである(旧陸海軍では階級ごとに最短滞留期間を定めてこれを停年と呼び,最長滞留期間つまり一定年数後も進級しない者は現役を辞めさせるとする時期を現役定限年齢,略して定年として区別した)。定年制の歴史は古く,日本では封建時代における武士の隠居(退隠制度)にさかのぼる。

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大辞林 第三版の解説

ていねんせい【定年制】

一定の年齢に達するとその職を退くことを定めた制度。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

定年制
ていねんせい

労働者が一定の年齢に達した場合に、その意思と能力および労働の必要性にかかわりなく自動的かつ画一的に雇用関係を解消することを定めた制度をいう。[三富紀敬]

歴史

日本では、明治の終わりころには一部の大企業で職員層を対象にする制度が設置され始めたといわれる。その後第一次世界大戦後から昭和初期に急速に増加し、1935年(昭和10)ころまでには、大企業の半分ほどに55歳、現業労働者層には一部50歳の制度が設置された。定年制が支配的になるのは第二次世界大戦後の1950年(昭和25)前後であるが、それも大企業においてであり、中小企業への普及は依然として少なかった。高度成長期には、大企業においてほとんど制度化され、この動きは中小企業にも広まった。[三富紀敬]

特徴

日本の定年制の特徴の一つは、この制度に定める退職年齢(55歳)が老齢年金の支給開始年齢(60歳)と接続していなかったことである。欧米諸国では、雇用労働者の老齢退職は年金の支給を契機に行われ、それまでは雇用関係が継続されるのが一般化している。この慣行は、公的年金制度が本格的に確立し、また私的年金制度が普及する第二次世界大戦後のことである。1970年代に入ると、公的年金制度に「柔軟な引退」という考え方が組み込まれ、これによって高齢者は、退職を決定するにあたっていくつかの方法を選択できるようになった。この場合にも、年金受給と老齢退職とは接続されている。これに比べて日本では、一定年齢での雇用契約の終了が公的年金制度とはほとんど関連をもたなかった。この問題は、60歳定年制の導入とともに解決されたかにみえる。しかし、定年年齢と老齢年金支給開始年齢とのギャップは、2001年度からの年金支給開始年齢の段階的な引上げとともにふたたび生じることになる。
 これと並ぶいま一つの特徴は、高齢者を自動的に解雇する制度であるということである。欧米の公的年金制度では、年金支給開始年齢での退職を求める規定は少ない。もっとも、私的年金制度に年金支給開始年齢での退職を求める条項のある場合があるが、それもあくまで年金制度上のものであって、雇用にかかわる退職制度ではない。その後の「柔軟な引退」措置は、高齢労働者が退職を決意するにあたっての選択の余地をさらに拡大している。このためアメリカやドイツでは、通常の退職年齢前の新規年金裁定件数が通常の退職年齢時のそれを上回り、フランスやイギリスでは、通常の退職年齢後のそれが相当な割合を占めている。これに比べて日本の定年制は、制度の成立期にあたる戦前においては老齢退職の一つのパターンを形成したが、今日では老齢退職としての実質は失われている。[三富紀敬]

問題点

定年制のある事業所の割合は、2008年(平成20)に73.5%、定年制のない事業所の割合は26.5%である。定年制のある事業所のうち一律に定める事業所の割合は67.1%であり、このうち定年年齢が60歳の事業所割合は82.0%ともっとも多くなっており、定年年齢65歳以上の事業割合は14.8%である。
 少子高齢化の急速な進展に伴う労働力人口の減少が見込まれ、2012年には、いわゆる「団塊世代」が65歳に到達することから、65歳以上の定年制や定年制度の廃止を促して、高齢者の働く場所をいかに確保していくかが重要な課題となっている。また、日本の高齢者の高い就業意欲や中小企業における人材確保などの観点から、「70歳まで働ける企業」の実現も重要な課題である。中小企業定年引上げ等奨励金は、65歳以上への定年の引上げや、希望者全員を対象にする70歳以上までの継続雇用制度の導入、あるいは定年制度の廃止を行った事業所に給付される。
 55歳から出発した定年制度は、定年年齢の60歳の一般化を経て65歳以上への延長あるいは廃止の時代を迎えている。[三富紀敬]
『岩波書店編集部編『定年後――「もうひとつの人生」への案内』第3版(2003・岩波書店) ▽高齢・障害者雇用支援機構編・刊『高年齢者雇用確保措置の実態と70歳まで働ける企業の実現に向けた調査研究――第二次報告書』(2009)』

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世界大百科事典内の定年制の言及

【年功的労使関係】より

… 70年代に入ると,人口の急速な高齢化が認識されるようになり,従来一般的であった55歳定年を60歳定年に延長することが労使間および政府の重要課題となった。定年制は年功的労使関係制度の重要な一環であり,定年延長の場合,次のような問題が出てくる。(1)年功的労使関係をそのままにして定年延長を行うと,昇進の頭打ちが生じ,従業員のモラール・ダウン,企業活力の低下が起きる,(2)定期昇給制度をそのままにして定年延長を行うと,従業員が高齢になって職務遂行能力の伸長が期待できないにもかかわらず,基本給が上昇し,また高賃金の高齢従業員を低賃金の若年従業員で入れかえることができず,総労働コストの増大をもたらすことになる。…

※「定年制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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