一般に定置網とよばれているもので,沿岸の一定海面にこの漁具を移動しないように設置して漁をする。これは産卵・索餌のため回遊する魚群は,それぞれ,接岸の場所・時期がきまっているので,その習性を利用して網を建てるのである。その構造は,沖合にむけて垣網(かきあみ)をはり出して魚群の進路をたちきり,この網に当たった魚を沖合にむけ誘導し,垣網のさきに設けられた身網(みあみ)(囊網(ふくろあみ))へおとしいれるしくみになっている。錨や土俵で海中にがんじょうに固定設置され,2~3ヵ月から1ヵ年近くも建て込んだままおかれる。建網は種類が多く,台網類,落網(おとしあみ)類,枡網類,張網類,出網(だしあみ)類,網魞(あみえり)類の6種類に分けられる。定置網は一定の広域海面を独占し,いわゆる定置漁業権としての権利が認められており,現行漁業法では身網が設置される場所の水深27m以上のもの,および北海道でサケをおもな漁獲物とするものは,定置漁業権に基づかなければ営んではならないことになっている。一方,水深27m以下の場所に身網を設置するものは,共同漁業権に基づいて営まれ,小型定置網漁業とよばれている。
→定置網漁業
執筆者:秋田 俊一
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網漁具の一種。一般に定置網とよばれる漁具で、袋網(ふくろあみ)部、囲網(かこいあみ)部および垣網(かきあみ)部の3部からなるが、ときには袋網部が囲網部を兼ねて垣網部と2部の場合もあり、また囲網部が運動場部と登網(のぼりあみ)部に分かれ袋網部、垣網部を加えて4部となることもある。多くのものは海岸から沖合いに向けて垣網とよぶ1枚の長い網を張り出し、水面から水底までを遮断するので、沿岸に回遊してきた魚はこの網に当たって進路を変更し、垣網に沿いつつ沖合いの方向に誘導され垣網の先端にある囲網入口または袋網入口ヘ落ち込むような構造となっている。魚群の来遊に応じて適当な一定の場所に長期に敷設するので網は錨(いかり)や土俵などで固定設置されている。台網、出し網、張網(はりあみ)、桝網(ますあみ)、落し網などもこの類に含まれる。
[三浦汀介]
『野村正恒著『最新 漁業技術一般』(2000・成山堂書店)』
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…漁網といっても多種類にわたるので,いくつかに分類し,それにそって網漁業を概観していこう。農商務省が1886年に編纂に着手し10年を経て完成した《日本水産捕採誌》の漁網分類をみると,引(曳)網,繰網,巻(旋)網,敷網,刺網,建網,掩(かぶせ)網,抄(すくい)網の8類であり,これがその後の漁網分類の原型となっているので,ここでもこの分類による。
[引網]
引網類は魚群を囲み岸辺や漁船に引き寄せてそれを捕獲する網で,だいたいは中央部に囊(ふくろ)を備えていた。…
…例えば上総九十九里浜の大地引網には,漁夫100人以上を必要とするものもあった。また建網(定置網類)は水中に垣網をたてて回遊魚群をふくろ網に誘導,捕獲する漁網であり,江戸時代に著しく発達したが,これにも漁夫数十人を要する大型漁網が少なくなかった。 これらの漁業の経営を述べるには,まず漁場制度に触れなければならない。…
…効率がよすぎて資源保護上の問題から禁止している地区も多い。 定置網(定置網漁業)は建網類とも呼ばれ,形・規模はさまざまであるが,一般に陸から沖に向けて魚道を遮るように垣網を張り,その先に囲い網をつける。魚群は垣網にそって泳ぐうちに囲い網の中に誘導される。…
…垣網と身網(囊網)とからなる建網類のひとつで,浮子(あば)と沈子(いわ)とを用いて網を魚道に定置し,そこを通過する魚群を知らず知らずのうちに身網に誘導し,おちこむようにするもの。特徴は水中の身網を起こしあげて魚を捕獲する点。…
…定置網は文字通り一定の場所に長期間設置しておく網漁具で,建網類とも呼ばれる。定置網を用いて営む漁業が定置網漁業である。…
…江戸時代に松前藩のもとで蝦夷地(北海道)が開発されるにつれ産卵のため北海道西岸に接岸する春ニシンを漁業対象とするようになり,初めてニシン漁業が本格化した。最初は松前藩本領の渡島(おしま)を中心に,たも網,刺網(垂網(たれあみ))などで漁獲していたが,不漁期のたびごとに漁場を拡大し,漁具も大網と呼ばれる笊網(ざるあみ)(起し網),建網(行成網,角網)へと変わった。その結果,大量漁獲が可能となり,ニシン粕・油の製造が起こり,イワシ粕・油を凌駕(りようが)し,松前藩の重要産物となった。…
※「建網」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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