落し網(読み)オトシアミ(その他表記)trap net

デジタル大辞泉 「落し網」の意味・読み・例文・類語

おとし‐あみ【落(と)し網】

定置網の一。網に入った魚が逃げ出さないように、傾斜のある登り網をつけたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「落し網」の意味・わかりやすい解説

落し網
おとしあみ
trap net

漁業網漁具のうち、定置網類の一種で、垣網、登り網、袋網(箱網)の3部からなるもの(瓢(ひさご)網類)と、登り網の前部魚群がたまる囲網(かこいあみ)(運動場)が加わって4部からなるもの(狭義の落し網)とがある。この網の特徴は、魚の通路を遮る垣網で誘導された魚群が、直接またはいったん囲網に入ってから、上り傾斜のついた漏斗(ろうと)状の登り網を通って袋網に落ち込む仕組みにあり、袋網だけを揚網して漁獲する。登り網と袋網が垣網の両側にあるものを「両落し」、片側だけにあるものを「片落し」とよぶ。また、魚の入り口が垣網の両側にあるものを「両口」、片側だけのものを「片口」という。囲網のないものを瓢網類、囲網を有するものを狭義の落し網と分類するが、袋網を複数取り付け、さらにその先に金庫と称する溜(たまり)網を取り付けている落し網もある。囲網に底網(敷(しき)網)はなく、袋網は底網を有している。溜網の底網は、海底に着底しないよう水深の半分程度または水深の3分の1程度の深さに設計され、さらに天井網を取り付けることができる。比較的沿岸性の小形の魚類アジサバイワシなど)を捕獲対象とする場合の端口(はぐち)は両口構造とし、大形回遊魚(ブリマグロなど)を漁獲対象とする場合の端口は片口構造とするのが一般的である。

 落し網は技術的にもっとも進んだ定置網で、現在の定置網のほとんどがこれである。規模や形はさまざまで、ことに小型落し網は、小台(こだい)網、ちょこ網、瓢網、角(かく)網など名称も地方によって異なる。また、底建(そこたて)網を改良した登り網を取り付けた落し網、およびこれと底建網を併用した中層定置網、底層定置網があり、これらには天井網を取り付ける。

[添田秀男]


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百科事典マイペディア 「落し網」の意味・わかりやすい解説

落し網【おとしあみ】

定置網の一種。垣網,のぼり網,袋網からなる。さらに囲い網のつくものもある。魚群は垣網に沿って,のぼり網に誘導され,袋網に落ちこむ。のぼり網は落し網の特色で,袋網に近づくにつれて浅く狭くなり,袋網で急に深くなるため,魚群は逃げられなくなる。のぼり網・袋網が垣網の片側にあるものを片落し,両側にあるものを両落しという。イワシ,タラその他種々の沿岸魚類を対象とする。落し網の起源は江戸期にさかのぼるが,現在の型ができたのは1923年ころで大謀網に代わって普及し,定置網の主流となっている。
→関連項目網漁具

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