日本大百科全書(ニッポニカ) 「張籍」の意味・わかりやすい解説
張籍
ちょうせき
(766?―830?)
中国、中唐期の詩人。字(あざな)は文昌(ぶんしょう)。原籍は呉郡(ごぐん)(江蘇(こうそ)省)。少時に和州(安徽(あんき)省)烏江(うこう)に移住。799年(貞元15)の進士。40歳ごろより10年近く太常寺太祝(たいじょうじたいしゅく)に低迷し、貧窮のなかで一時、眼病を患う。国子助教、秘書郎、水部員外郎、主客郎中、国子司業を歴任。剛直でかたくなな反面、誠実で思いやりがあり、多くの名士と交遊した。韓愈(かんゆ)は生涯の恩人、白居易は詩友であった。平易な詩語で人心を伝える張籍の楽府(がふ)は、白居易に称賛されてより今日に至るまで、高く評価されている。「力尽くるも杵声(しょせい)を休(や)むるを得ず。杵声未(いま)だ定まらずして人皆な死す」(『築城詞』)といった尖鋭な諷諭(ふうゆ)性と直截(ちょくせつ)な筆致に特色がある。民歌的な作品もあり、同時代の王建とともに「張・王楽府」と並称される。『張司業集』八巻がある。
[丸山 茂]