日本大百科全書(ニッポニカ) 「強化ガラス」の意味・わかりやすい解説
強化ガラス
きょうかがらす
tempered glass
焼入れや表面処理などの方法で板ガラスやコップなどの強度を数倍に増大したガラス。ガラスの理論強度は1平方センチメートル当り20万キログラム程度と考えられるが、現実にはその数百分の1の強度しかないのは、手や布などのほかの物質に軽く触れただけで表面にマイクロメートル(1000分の1ミリメートル)程度の傷が無数にできるためである。焼入れ(物理強化)やイオン交換(化学強化)は、ガラスの表面層に傷口を閉じようとする圧縮応力層をつくる強化法である。前者は薄いガラスには不向きであり、後者はアルカリを含まないガラスには不向きである。このほか表面の摩擦を減らして傷の発生を抑える表面処理法もあるが永続性がない。自動車・建築物の窓ガラスやコップの一部には物理強化ガラスが、携帯用ディスプレー、時計、磁気ディスク、瓶などの一部には化学強化ガラスが使われている。
[境野照雄・伊藤節郎]