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待機児童問題

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

待機児童問題

認可保育園に希望しながら入園できない待機児童数で、名古屋市は昨年まで2年連続で全国ワースト1だった。今年4月1日時点で280人まで減らしたが、潜在的な待機児童はさらに約4千人と推計される。3年前の全国最多だった横浜市は、民間企業の保育園参入を進めるなどして今春に待機児童ゼロを達成した。安倍政権は子育て支援策として「横浜方式」を全国に展開していくと主張。2年間で約20万人分、保育需要ピークが見込まれる2017年度末までに約40万人分の保育の受け皿を新たに確保する「待機児童解消加速化プラン」を提言している。

(2013-07-14 朝日新聞 朝刊 2社会)

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知恵蔵の解説

待機児童問題

子育て中の保護者が、仕事や家庭の事情などで保育園への入所を希望し、申請しているにもかかわらず、入所できないで待機を余儀なくされている児童の問題。保育園については、以前から東京23区や愛知県名古屋市、神奈川県横浜市といった都市部などで認可保育園への入所が困難なことが問題となっていたが、2016年2月、インターネット上に匿名で投稿され、入所選考に落ちた怒りをつづった「保育園落ちた日本死ね!!!」と題したブログが保護者らの共感を呼び、国などに早急な対策を求める声が広がった。
厚生労働省の発表によると、待機児童はここ数年で減少傾向にあったが、共働き世帯の増加などに伴い、15年10月時点で4万5315人と5年ぶりに増加している。そのうち約9割を3歳未満の低年齢児が占める。また、(1)特定の認可保育施設への入所を希望して認められず、自治体が通えると判断した他の施設にも入らなかった、(2)認可施設に入れず、認証保育所などの認可外施設に通っている、(3)親が育児休業中、または求職活動をやめたなどの理由で自治体が待機児童に算入していない児童を「隠れ待機児童」といい、同年4月時点で約6万人に上っている。
問題の背景には、都市部を中心とした保育施設不足や保育士不足などがある。都市部では物件の確保や周辺住民らの反対などで施設整備が遅れており、16年3月時点で、待機児童が全国最多の東京都世田谷区は保育所の定員増が計画の6割に、同目黒区は半数にとどまる見通し。大阪府大阪市は認可保育所の増設を掲げ、施設不足が深刻な中心部で事業者への家賃補助も始めたが、新設予定16カ所のうち、開設が決まったのは10カ所である。横浜市は新設予定だった認可保育所24カ所のうち、7カ所の開設を見送った。保育士不足も深刻で、賃金が希望と合わない、責任の重さや事故への不安などを理由に毎年3万人以上が離職し、人材定着が進んでいない。保育士資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」は全国で80万人弱と言われている。
厚生労働省は待機児童問題への議論の高まりを受け、16年3月28日に緊急対策を発表した。2歳児までが入れる小規模保育所の定員上限の引き上げや緊急的な一時預かり事業の拡充、企業内保育所の整備などの対策を打ち出した。しかし、施設の増加策や保育士の給与引き上げといった抜本的な対策は含まれておらず、塩崎恭久厚労大臣は「都市部で受け皿増が進むまでの緊急的な策」としている。また3月31日には、企業内保育所の整備などを盛り込んだ改正子ども・子育て支援法が成立した。
子どもが待機児童となり、職場復帰ができない社員に対し、支援策を打ち出す企業もある。大手企業を中心に、認可外施設に預けて復帰する際の保育料の一部負担や、保育園に入所しやすい地域や実家近くに転居する際の引っ越し費用の補助、入所活動や職場復帰後の働き方をアドバイスするセミナー開催などのケースがある。

(南 文枝 ライター/2016年)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

待機児童問題
たいきじどうもんだい

認可保育所に入所申請をしても、希望する保育所の定員超過などの理由により入所できない子供がいるという社会問題。入所できない理由は、定員超過、施設の場所や託児できる時間帯が希望とあわないことなどである。待機児童問題は、親の子育てに対する不安感を高め、ひいては少子化問題を深刻化させ、親の産休後や育児休暇後の就労を妨げることから、男女共同参画社会の実現を妨げる一因にもなっている。
 2012年(平成24)4月時点で待機児童は厚生労働省の資料によると全国に2万4825人いる。このうち、産休や育児休暇後に託児先を探すケースが含まれる0歳~2歳児は2万0207人で、待機児童全体の81.4%を占めている。また、都道府県別では、東京都7257人、沖縄県2305人、大阪府2050人、神奈川県2039人の4都府県に極めて多く、全国的に都市部に偏在している。なお、全国で保育所を利用する児童数は約217万7000人で、保育所の定員数に対する充足率は97.2%に達しており、ほぼ満員の状態にある。
 待機児童は、男女雇用機会均等法の施行(1986)や、都市部での核家族化の進展により、1990年代後半から急増し始めた。国は少子化対策や男女共同参画社会の実現に向けて、1994年にエンゼルプラン(「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について」)を制定。0~2歳児の低年齢児保育や延長保育、施設の充実などを進め、以降、新エンゼルプラン(「重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施計画について」、1999年12月制定)、待機児童ゼロ作戦(2001年7月制定)、子ども・子育て応援プラン(2004年12月制定)、新待機児童ゼロ作戦(2008年2月制定)などを実施してきた。待機児童数は、2007年には1万7926人にまで減少したが、その後、長引く不況によって共働き世帯が増加し、ふたたび増加に転じた。以降も、年度ごとに保育所定員数は着実に増加し、2011年、2012年と待機児童数は2年連続でやや減少したものの、需給のバランスを大きく改善するまでには至っていない。この問題の打開策となるのが、既存の幼稚園の教育と保育所の保育という役割を統合した幼保一体化施設の創設で、2010年に始まった施策、「子ども・子育て新システム」の柱となっている。だが、それぞれの施設や設備の違いが壁となり、財源の確保も含め、また政権交代もあって、先行きは不透明な状態である。
 また、入所が困難であるため、はじめからあきらめて申し込みをしない場合には待機児童としてカウントされない。このため利用枠が広がっても、その分だけ希望者が増えるという現象がみられる。こうした潜在的な待機児童について、厚生労働省は最大で85万人、民間研究機関は最大で198万世帯、364万人いると推計している。[編集部]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

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