従価税・従量税(読み)じゅうかぜいじゅうりょうぜい(英語表記)ad valorem tax, specific tax

日本大百科全書(ニッポニカ) 「従価税・従量税」の意味・わかりやすい解説

従価税・従量税
じゅうかぜいじゅうりょうぜい
ad valorem tax, specific tax

租税はいかなる側面に着目するかによりいろいろな形で分類されるが、従価税従量税への分類は、個別消費税の課税において、課税標準税率の定め方に関してなされる分類である。従価税というのは、課税標準を課税物件の価格で表し、それに対する一定比率という形で税率を規定する。他方、従量税の場合には、課税標準は物量単位で表されて、税率はその1単位当りいくらという形で定められる。

 わが国の国税の例をとると、従価税として消費税があり、課税標準の資産の譲渡等の対価の額や引取価額に対して国税分の4%、さらに地方消費税の1%の税率を適用して課税される。また消費税の前身であった物品税も従価税であり、小売課税なら小売価格の15%とか10%の税率が、製造課税ならば販売価格の30%、20%などの税率が適用された。そのほか自動車取得税には、自動車の取得価額の5%とか3%の税率が課される。

 ほかの主要間接税は物的単位当りいくらという形で課税される従量税であり、酒税は各種の酒に対して1キロリットル当りいくらという形で、たばこ税は各種製造たばこに対して1000本当りいくらという税率を適用して課税される。そのほか、揮発油税・地方道路税、石油ガス税航空機燃料税石油税、地方税の軽油引取税、自動車税、軽自動車税、自動車重量税等が物的単位当りいくらという税率を課される従量税である。

 同額の税収をあげる従価税と従量税を比較すると、自由競争の下では結果はまったく同じであるが、独占の条件においては、従量税の場合には従価税の場合よりも価格が高くなるという短所がある。また、従価税は、価格の変動に伴ってその税収も変動するから、景気変動に対してビルトイン・スタビライザー(自動安定装置)の役割も果たす。一般的には物価は上昇傾向をたどるから、従量税の場合には、ときどき税率を引き上げないと自動的にその負担は低下し、不公平が生ずる。

[林 正寿]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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