経済における競争には、売り手間、買い手間、売り手・買い手間の三面があるが、そのいずれにも経済外的な干渉・制約を受けず、売り手・買い手の経済力が自由に発揮され、競争される状態をいう。A・スミスに代表される自由主義思想の時代には、これによって経済に正常な秩序がもたらされるとされた。自由競争そのものが独占を必然的に生み出すとしたのがK・マルクスであり、修正資本主義思想は、自由競争を回復するための経済外的干渉が必要であるとしたが、最近では新自由主義の復活とともに、ふたたび自由競争市場のパフォーマンスが主張されている。
[一杉哲也]
…経済学では,〈自由競争free competition〉という概念は,一般に制約や干渉なしにほぼ同じ力のものが互いに他を排して,しかしその努力を阻害することなく最大の成果をあげるために競い合うという意味に用いられるが,その内容はあまりに広範で理論分析を行ううえの理想型としては明確性を欠くきらいがある。完全競争というのは,市場機構が最も理想的に機能する場合を抽象化した経済分析上の市場の類型で,通常つぎのような条件によって特色づけられる。…
…財についても同様である。 したがって市場社会における市場は,それが経済体制の要(かなめ)をなしており,他の社会制度を変化させるような強力なインパクトを他に与えるという点では古代・中世の市場と異なっている一方,自由競争が完全な意味で展開されるといった,いわば裸のすがたで市場のメカニズムが作動することのないよう,制度的に保護され限定された売り買いの制度であるという面では従来の市場となんら変わるところはない。
【市場の経済理論】
経済学は,市場社会の形成と歩調をあわせるように,独立の学問分野として生まれ発展してきた。…
※「自由競争」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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